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142話 たまには二人きりで

 リーフランドは緑豊かな街だ。

 こうして街を歩いていると、そのことを強く思う。


「うーん……ソフィア、遅いな」


 街の中央にある噴水の前で、僕はのんびりとソフィアを待っていた。


 今日は休暇にして……

 ソフィアと一緒に、のんびりと街の観光をする予定だ。


 アイシャとリコリスは、エドワードさんとエミリアさんと一緒にいるらしい。

 なので、ソフィアと二人きり。


「デート……なのかな?」


 言葉にすると、なんともいえない恥ずかしさがこみあげてくる。

 それと同時に、うれしさも。


 色々なことがあって忙しくて、のんびりすることができなかったらし……うん。

 今日は、楽しい一日になるといいな。


「どうしたのかな?」


 ただ、肝心のソフィアが姿を見せない。


「デートは待ち合わせが基本です!」


 なんてことを言われて、噴水の前で待っているんだけど……

 おかしいな?

 もう時間は過ぎているんだけど。


「お、おまたせしました!」

「あ、ソフィア。よかった、なにかあったんじゃない……かと、思って……いた?」


 息を切らしながら、ソフィアが駆けてきた。

 その姿は、僕が知るソフィアとぜんぜん違う。


 清潔感のあるワンピース。

 それと、シンプルな帽子とバッグ、アクセサリーなどの小物。

 それらを身にまとうことで、ソフィアは剣士ではなくて、深窓の令嬢という感じの装いに変化していた。


「すみません、準備に少し時間がかかってしまい」

「……」

「あの……フェイト? 怒っていますか……?」

「……」

「うぅ……フェイト、なにか言ってください。そこまで怒るなんて、私は……」

「……はっ!?」


 ソフィアがあまりにも綺麗なものだから、言葉をなくしてしまうくらい見惚れてしまった。


「え? え?」

「あれ?」


 ソフィアが真っ赤になる。


 しまった。

 今、考えていたことをそのまま口に出していたみたいだ。


「あ、ありがとうございます……」

「ど、どういたしまして……?」

「……」

「……」


 互いに恥じらい、顔を熱くしてしまう。


「えっと……今日のデート、とても楽しみにしていまして、がんばっておしゃれをしてみたのですが……本当に似合っていますか?」

「う、うん。すごく似合っているよ。いつもの何倍も綺麗でかわいくて……ご、ごめんね。こんな言葉しか出てこなくて」

「いえ、そんな! フェイトにそう言ってもらえるだけで、私はとても幸せです」


 ソフィアが、とてもうれしそうにはにかむ。


 やばい。

 その格好でそんな笑みを見せられたら、本気でどうにかなってしまいそうだ。


「……」

「……」


 妙な沈黙。

 でも、気まずいわけじゃなくて、一緒にいるだけで幸せというか……

 とても温かい気持ちになる。


「い、いこうか」

「そ、そうですね」


 こうして、僕とソフィアのデートが始まった。




――――――――――


「あっ、フェイト、見てください」


 露店を見て回っていると、ソフィアが足を止めた。

 手作りのアクセサリーが並べられている店で、リングにブレスレットにネックレスに、色々な種類がある。


「このリング、フェイトに似合うと思うますよ?」

「え、僕?」

「はい。派手ではなくて、しかし存在感がないわけではなくて、フェイトにピッタリだと思います」

「男の僕がリングなんてつけても……」

「ダメですよ」


 ツン、と鼻先を指で押されてしまう。


「男性でもおしゃれは必須です。リングをつけるのも、特別おかしなことではありません」

「そうなの?」

「そうですよ」


 なるほど、勉強になる。

 最近は強くなることだけを考えていて、おしゃれなんてぜんぜん頭になかった。


 でも……うん、そうだよね。

 こんなにも綺麗なソフィアと一緒にいるんだから、少しでも釣り合いがとれるように、僕もがんばらないと。


「あ、あの……フェイト? そんな風に言われてしまうと、その……恥ずかしいです」

「ご、ごめん」


 またしても言葉にしていたみたいだ。


 いけない、いけない。

 ソフィアとデートだから、今日は浮かれているのかもしれない。


「えっと……ソフィアのおすすめは、このシルバーのリング?」

「あ、はい。そうですね。それが一番、フェイトに似合うと思いますよ」

「そっか」


 手作りだからなのか、そんなに高くない。

 お手頃価格だ。


 おもいきって買ってみようかな?

 あ、待てよ?

 それよりは、ソフィアとおそろいにして……


 薬指にリングをつけて、にっこりと笑うソフィアを想像してしまう。


「いやいやいや!」

「フェイト?」

「な、なんでもないよ! うん、なんでも!」


 確かに、それも同じリングだけど!

 でも、まだそういうことは早いというか、僕にもっと甲斐性がないとダメというか!

 いずれとは思うけど、今はまだダメ。


 というか、今の妄想、口にしていなくてよかった……


「つ、次に行こうか!」

「え? あ、はい」


 どうしても照れくさくなり、ソフィアの顔を見ることはできず……

 でも、その手を掴んで引いて、他へ移動した。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 もしもこちらの世界にレイン側のギルドスタッフ「ナタリー」が居たら・・・ ナタリー「ふう、臨時移動でこちらの世界のギルドに務めることになりましたが、なんだか…
[良い点] フェイトさん、指輪のシーンで「まだ」ということは近々するということですね?そうですよね〜? おや、顔が赤くなってますなあ。 この事をリコリスに教えてあ〜げよ〜と!
[良い点] アイシャとリコリスが、無理矢理ついてこなかった事 アイシャは甘い食べ物に釣られただけかもしれないが リコリスはここぞというときは、キチンと空気を読む 大人(?)の余裕かもw [気になる点…
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