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139話 楽しみ♪

「やっほー」


 『黎明の同盟』が使用するセーフハウスに、レナとリケンの姿があった。


 先にセーフハウスで休んでいたのはリケン。

 遅れてレナが現れて、とても機嫌良さそうに挨拶をした。


「機嫌が良さそうだな?」

「まあねー」

「計画は成功と見ていいのじゃな?」

「んにゃ。失敗だよ」

「……なんだと?」


 リケンが眉をひそめる。

 そんな様子を気にせず、レナは保冷庫からドリンクを取り出して、そのまま飲んだ。


「ふう、おいしいー。やっぱり、動いた後は喉が乾くよねー」

「どういうことだ? お主も失敗したというのか?」

「お主も? え、リケン、失敗しちゃったの?」

「……うむ」


 リケンは苦々しい顔で頷いた。


「一部隊を投入したが、全て返り討ちに遭ってしまった」

「リケンは?」

「儂が出ればなんとかなったかもしれぬが……しかし、それでも時間がかかることは確実。あの状況では、あまり目立つわけにもいかぬからな……残念じゃが、素材の回収は諦めた」

「リケンにそこまで言わせるなんて、領主ってけっこう強い?」

「そうだな……強いが、それよりも女の方が厄介だな」


 当時、リケンは屋敷から離れたところで状況を見極めていた。


 すると、どうだろう。

 十分な距離を持っているはずなのに、領主の妻……エミリアがリケンの方を見たのだ。


 ただの偶然ではなくて、じっとこちらを見つめていた。

 さすがに正体まで見抜いていないだろうが……

 視線を感じていたのは確かだろう。


「まさか、あのようなことができるとはな。やりあってはいないが、相当な実力者に違いない」

「なるほどー。まあ、剣を習っていてもおかしくないよね。あそこの家、女の方が色々な意味で強いっぽいし」

「それで……レナよ。お主まで失敗してしまったのか?」

「正確に言うと、半分失敗かな?」


 レナは語る。


 魔剣を回収して、証拠は残していない。

 しかし、アイザックが敗れ、依頼人のオーダーを果たすことができなかったことは確か。

 だから、半分失敗なのだ。


「魔剣を渡して、おまけに剣聖を無力化するための特製の薬まで渡したのに。あれで失敗するなんて、無能だよねー」

「相手が厄介だったのかもな」

「一応、後始末はちゃんとしておいたよ」

「なるほど……まあ、それなら問題ないだろう。依頼人といっても、所詮、金の関係でしかない。すでに前金は受け取っているし、魔剣を回収したのなら問題はなかろう。成功する確率も低いと思っていたしな。依頼人は……」

「うん。帰り道に、ついでに殺しておいたよ」


 大した繋がりがないとはいえ、彼には少ししゃべりすぎていたところがある。

 余計な荷物となる前に消す。

 レナにとっては当たり前のことだ。


「それならば半分失敗というのも頷けるが……しかし、なぜ機嫌が良いのだ?」

「んー……うふ、えへへー」


 突然、レナがにへらと笑う。

 今まで見たことのない相棒の顔に、リケンは首を傾げた。


「ボク、運命の人を見つけちゃったかも」

「は?」

「まさか、フェイトがあそこまですごいなんて……完全に予想外だったよ」


 量産品の魔剣とはいえ、アイザックを圧倒してみせた。


 それだけではない。

 本気モードの自分を前にしても失神することなく、怯むこともなく、逃げようとしなかった。


 なんて素晴らしいのだろう。

 今はまだ、未熟な雛かもしれない。

 しかし、育てば雄々しく空を飛ぶ鷹になるだろう。


 その姿を想像するだけで、レナは胸がドキドキした。

 体が熱くなった。

 心がときめいた。


「うーん……ボク、絶対にフェイトをものにしたいかも!」

「なんの話をしているのだ……?」

「あ、ごめんねー。未来の旦那さまを見つけたから、わくわくしちゃって」

「なんだと? そのような相手がお前に……いや、待て。それは、剣聖の連れの、フェイトとかいう小僧か?」

「うん、そうだよ」

「なにをバカな……剣聖の連れである以上、あの小僧は敵であろう。大した力は持っていないように見えたが、まあ、警戒する必要はないが……それでも、味方にするなんてありえぬ。放っておけ」

「やだよ」


 レナはにっこりと笑う。

 笑いつつ、絶対零度の殺気を放つ。


「っ……!」


 レナの圧を受けて、リケンは思わず体が震えた。


 相手は二十にも達していない小娘。

 そして自分は、何十年も剣を学んできた。


 普通に考えて、その差は圧倒的。

 レナに怯えるなんてありえないのだけど……


 そのありえないことが現実に起きていた。


 黎明の同盟、第3位の実力者。

 その力は圧倒的で、まともに戦えばリケンでは足元にも及ばないだろう。


「ボク、絶対にフェイトをものにするんだから。もしもその邪魔をするなら……」

「う、く……」

「斬るよ?」


 リケンが震えた。

 もはや蛇に睨まれたカエル。

 どうすることもできず、ただ彼女の意見を受け入れるしかない。


 はあ、とため息。


「まったく……お主がそこまでの執着を見せるなんて、初めてのことだな」

「うん、ボクも驚いているよ。きっと、これが初恋なんだね♪」

「なにを言っても仕方ないし、儂では止められん。好きにするがいい」

「ありがと」

「ただ、同盟に迷惑をかけるではないぞ?」

「わかっているよ。そこは、きっちりとしていくから」

「やれやれ……」


 本当にわかっているのか?

 そんな感じで、リケンはため息をこぼす。


「うーん、早くフェイトをボクのものにしたいなあ。手合わせしてみたいし、でもでも、それだけじゃなくて色々としてあげたいな。ごはんを作ってあげたいし、耳掃除とか……あと、やっぱりえっちなこともしたいよね。えへへ♪」




――――――――――




「くしゅんっ」

「どうしたのですか、フェイト。風邪ですか?」

「ううん、そんなことはないと思うんだけど……なんだろう? 妙な寒気が……」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] レナはフェイトの見たての様に善くも悪くも無いではないね。悪くは見えないなんて思っていたら見る目がないね。躊躇無く躊躇い無く当然の様に命を奪えるレナは、もはや狂人の殺人者でしかないから救…
[良い点] レナ・・、今後どうなるのか?あの作品の「イリス」みたくなるのか、それともあの作品の「アベル」みたくなるのか? [一言] 他の作品も読んでみて面白いです! 今後も頑張ってくださいな!
[一言] そういえば聖剣はどうなったっけ
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