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129話 急転直下

「ソフィアがさらわれた!?」


 その話を聞いたのは、夕暮れだった。


 ソフィアの顔合わせのことが気になりつつも、邪魔をしてはいけないと、アイシャとリコリスと一緒に部屋で待機していて……

 やけに遅いな? と思ったところで、顔を青くしたメイドさんが駆け込んできた。


 連れて行かれた先には、顔色を悪くしたエドワードさんとエミリアさん。

 そして、二人の口から許嫁候補だった男……アイザック・ニードルがソフィアをさらい、姿を消したことを伝えられた。


「まさか、そんなことが……」

「っていうか、あのソフィアをさらえるヤツなんているの?」


 リコリスの指摘はもっともだ。

 ソフィアは剣聖で、エドワードさん以上の力を持つ。

 そんな彼女をさらうなんて……


 メイドがひたすら申しわけなさそうにしつつ、言う。


「残っていたグラスを調べてみたところ、薬の痕跡がありまして……」

「なーる。いくらソフィアでも、薬には勝てないわよね」

「……犯人、アイザックのことを教えてください」


 今すぐにソフィアを助けに行かないと!

 本能に近い部分がそう叫んでいるものの、しかし、闇雲に調べても意味はない。

 確実に、絶対に無事に救出できるように、万全を期さないといけない。


 そのためにも、まずは犯人の情報が必要だ。

 ここにきて仲違いしている場合ではないと判断したらしく、エドワードさんは素直に情報を提供してくれる。


「うむ……今回、ソフィアの許嫁候補として選んだのは、アイザック・ニードル。この街に居を構える貴族の一人息子じゃ」

「貴族ですか……人柄はわかりますか?」

「やや自信過剰なところはあるが、親と似ず、真面目な青年だ。剣の腕も立つ。候補としては、ピッタリの相手ではあったのじゃが……」


 候補としては?

 その言葉に引っかかりを覚える。


 普通は、ソフィアの旦那としては、と言わないだろうか?

 候補という言葉を使うと、まるで……

 そこで終わってしまいそうじゃないか。


 って、今はそれはいい。

 もっと情報を聞いておかないと。


「真面目なのに、ソフィアをさらったんですか?」

「信じられないが、そうなるな……」

「目的はわかりますか? 推測でもいいので」

「もしかしたら、アイスによからぬことを吹き込まれたのかもしれぬ」

「アイス?」

「アイザックの父親じゃ。この街の有力貴族の一人で、儂のライバルというべきか。次の領主候補とも言われていて、敵視されているな」

「うーん?」


 次期領主になりたいアイザックが、アイスにソフィアを誘拐するように命令した。

 ソフィアを盾にして、領主を降りろとか譲れとか、そう要求するつもりだった。


 そう考えると辻褄は合うのだけど……


「ちょっとずさんすぎないかな?」


 辻褄が合うというだけで、とてもじゃないけれど綿密な計画とはいえない。

 ちょっとしたミスが原因で一気に瓦解してしまうような、適当極まりない計画だ。


 それに、アイザックな真面目な性格と聞くし……

 例え父親の命令でも、そんな無茶無謀な計画に協力するだろうか?


 なにか嫌な感じがする。


 誰かの手の平の上で踊らされているような……

 いつの間にかクモの巣に捕らえられていたかのような。

 心がザワザワとした。


「フェイト、どうするの? 殴り込みでもかける?」

「い、いかん! アイザックの犯行であることは、ほぼほぼ間違いないが、証拠がないのじゃ。それに、アイスが関わっているという確証もない。それなのに無茶をしては、ヤツの好き勝手を許してしまうことになる!」


 ソフィアを無事に助けるため、努めて冷静に物事を整理していたのだけど……

 うん、ダメだ。

 今の発言は無視できない。


「エドワードさんは領主だから、色々なことを考えないといけないと思います」

「む?」

「でも、今の発言は、ソフィアのことをまったく考えていません。今、彼女がどうなっているかわからないのに、他のことばかり考えて……立場もあると思いますが、でも、親ならこんな時くらい少しは娘のことを考えてあげてください!」

「う……ぬぅ……」


 エドワードさんはなにか言おうとして、しかし、口を閉じてしまう。


 エドワードさんは領主なのだから、色々とあるのだろうけど……

 それでも、もう少しソフィアのことを気にかけてほしかった。


 そんな僕の言葉は届いたらしく、エドワードさんは下を見てしまう。

 己の言動を恥じているかのようだった。


「で、どうするの、フェイト?」

「えっと……」


 考える。

 考える。

 考える。


「よし」


 答えを出した。


「殴り込みはしない」

「えー」


 なんで、そこでリコリスは残念そうにするのかな?


「でも、こっそりと忍び込む」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 流石、フェイト、苦労人 (苦笑) 飛び出して行きたいでしょうに、グッと抑えて、まずは正確な情報収集、からの迅速な決断及び始動 ・・・ 逆の立場に置かれた場合の剣聖様より的確な手際の良さか…
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