125話 決着の行方は?
ギィンッ!!!
鉄と鉄がぶつかる、甲高い音が響いた。
「ぐっ……!」
僕の全力の一撃を、男はしっかりと受け止めてきた。
ただ、さきほどと違い、反撃に移る余裕はないらしい。
刃と刃が競い合う。
力比べをする形となり、互いに全力で剣を押し込んでいく。
「このぉ……!!!」
「ぐぅ!?」
全身の筋肉を使い、ありったけの力を振り絞る。
体ごと前に倒れるような感じで、剣を押し出した。
一瞬ではあるが、男が僕の圧に押され、バランスが崩れた。
その隙を見逃さない。
足で地面を蹴るようにして、さらに突撃。
全体重をかけて、押し切る!
ガッ!!!
ついに、男が完全に体勢を崩した。
僕の剣圧に負けて、吹き飛ばされる。
背中から壁に激突して、小さな悲鳴がこぼれるのが聞こえた。
このまま一気に……!
決着をつけようとするのだけど、
「っ!?」
ゾクリとした悪寒を覚えて、足を止めた。
距離を保ち、油断なく剣を構える。
「ぐっ、この俺が……なんてことだ、俺は正しい、正しいんだ……力こそ正義なんだ」
「なんだ……?」
今のとんでもない殺気……男のものじゃない?
男は確実にダメージが蓄積されているらしく、明らかに動きが鈍っていた。
そんな彼が、あんなにも冷たく鋭利な殺気を放つことができるとは思えない。
だとしたら、今のはいったい……?
「……いや」
考えるのは後だ。
今は、この男との決着を。
「……」
「……」
こちらが戸惑っている間に、男は体勢を立て直してしまう。
ただ、すいぶんと弱体化しているように見えた。
心なしか、魔剣も力を失いつつあるように感じる。
あと一歩、というところかな?
ただ、破山は近接専用の技だ。
手負いの獣ほど怖いというし、なるべくなら接近戦は避けたい。
リスクを恐れていたら、勝利を掴むことはできない。
でも、無謀な蛮勇は勇気とは違う。
「……よし」
少し考えて、覚悟を決めた。
剣を鞘に戻した。
その上で、左手で鞘を支え、右手でしっかりと剣の柄を掴む。
深く、深く構える。
脳裏にソフィアの姿を思い浮かべつつ……
その綺麗な動作を再現しつつ……
剣を抜く。
「神王竜剣術・四之太刀……」
駆ける。
駆ける。
駆ける。
どこまでも高く。
誰よりも速く。
そして……抜剣。
「……蓮華」
ソフィアが見せた、超高速の抜剣術。
みよう見まねで、ソフィアが見たら、たくさんの粗を指摘されるだろうけど……
それでも、できた。
そして、届いた。
「……がっ」
男の魔剣が半ばから折れた。
それと同調するかのように、男は小さな悲鳴をあげて、崩れ落ちた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
念のために構えは解かないのだけど、男が立ち上がる気配はない。
胸元が動いているところを見ると、気絶しているだけのようだ。
よかった。
僕自身を優先すると決めたものの……
それでも、やっぱり、できるなら命は奪いたくないと思っていた。
僕は、こうして生き延びることができた。
そして、男を倒すことができた。
魔剣も折ることができた。
うん。
これ以上ないくらい、最善の結果だ。
「ふう」
もう大丈夫。
そう判断して、剣を鞘に収めた。
その時だった。
パチパチパチと、どこからともなく拍手が響いてきた。
「え?」
気配なんてなかった。
僕と男の他に、誰もいないはずだった。
それなのに、どこから……
いや。
いったい、誰が?
「いやー、すごいね。うん、本当にすごいと思うよ。おめでとう」
そう言って、笑顔を浮かべていたのは……レナだった。
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