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119話 さらなる境地へ達するために

 翌日。

 僕とソフィアは、街の郊外へ移動した。


 街と外の境目辺り。

 そんなところに建物なんてない。

 これから開発予定なのか、雑草の生えたなにもない土地があるだけだ。


「ここなら、思う存分に戦うことができますね」

「ソフィアの家の道場は使えないとしても、冒険者ギルドの訓練場とかはダメなの?」


 冒険者ギルドには、基本的に訓練場が用意されている。

 冒険者であれば、自由に使っていいとされているのだけど……


「あそこでは、少し狭いですね。私は、本気にならないといけないので……下手をしたら、建物を巻き込んでしまいます」

「……なるほど」


 つまり僕は、これから、本気のソフィアと戦わなくてはならない……ということか。


 ぶるりと体が震えた。

 素直に怖いと思う。

 でも、恐怖だけじゃなくて、ワクワクもしていた。


 本気のソフィアと戦うことで、さらに強くなれるかもしれない。

 いや。

 強くなってみせる。


 そんな想いが、僕に前を向かせていた。


「今までは、こうした方がいい、ああした方がいい、と色々とアドバイスを送っていましたが……今回は、そうしたものはありません」


 そう言いつつ、ソフィアは剣を構えた。

 予備の剣ではなくて、聖剣エクスカリバーだ。


 剣を抜いただけなのに、とんでもないプレッシャーが襲いかかる。

 空気がビリビリと震えて、うまく呼吸ができなくなってしまうほどだ。


 ここにアイシャやリコリスがいたら、大変なことになっていただろうけど……

 今は、二人はいない。


 本気の稽古となると、さすがに、アイシャに見せることはできない。

 なので、アイシャはお留守番。

 リコリスは、アイシャの遊び相手をお願いしておいた。


「神王竜について教えるのならば、丁寧にアドバイスを教えて、コツコツと練習を積み重ねていくのですが……フェイトが今求めているものは、単純な力。戦い抜いて、生き伸びることができる力」

「うん、そうだね」

「なら、本気の私と戦い、その体で感じ取り、学んでください」

「全ては僕次第、っていうわけだね?」

「はい。意味のない戦いとなるか、それとも、有意義な稽古となるか……全ては、フェイト次第です」

「……」

「私は本気でやりますが、一応、寸止めはします。でないと……フェイトを殺してしまうので」

「うっ……!?」


 その言葉が合図だったかのように、ソフィアの体から闘気が放たれた。


 なんて……なんて圧倒的な闘気だ。

 質量すら持っていて、気合を入れていないと、そのまま意識を持っていかれてしまいそう。


 戦闘態勢に移行しただけでコレ。

 戦いが開始したら、いったい、どうなってしまうのか……?


 さらに恐怖が膨れ上がる。

 でも、ワクワクも大きくなり……


「では、いきますよ」

「お願いします」


 僕も剣を構えた。


 ちなみに、使う剣は、武具店であらかじめ買っておいた使い捨てのものだ。

 最初は雪水晶の剣を使おうとしたのだけど……

 「壊してしまうので、他の剣にしてください」とソフィアに言われたのだ。


 それは、彼女の過信ではない。

 圧倒的な自信というわけでもない。

 ごくごく単純な……事実なのだろう。


「では」


 ソフィアはコインを取り出して、指で宙に弾いた。

 コインがくるくると回転して……

 そして地面に落ちて音が鳴った瞬間、戦闘が開始される。


「ふっ!」

「はぁあああっ!!!」


 互いに地面を蹴り……


 ゴガァッ!!!


「!?!?!?」


 突然、とんでもない衝撃が全身に走り、僕は空を飛んでいた。

 ソフィアと一合交わしただけで吹き飛ばされたのだと、遅まきながら気がついて……


「うぐっ!?」


 木の幹にぶつかり、ようやく止まる。


 切り傷はない。

 ちゃんと寸止めしてくれたのだろうけど……


 ソフィアの剣速は驚異的なものとなり、衝撃波を発生させていた。

 それの直撃を受けた僕は、なすすべなく吹き飛ばされて……という感じだろうか?


 素直に恐怖した。

 まさか、寸止めされていても、ここまでの威力を叩き出せるなんて。

 なにもすることができず、一瞬でやられてしまうなんて。


 でも……今の僕には、恐怖している時間すらない。


「はぁっ!!!」

「くぅ!?」


 まだやれますね?


 そう言うような感じで、ソフィアの追撃が。

 かなりの距離があったはずなのに、ソフィアは一足で詰めてしまう。

 そして、聖剣を横に薙ぎ払う。


「こっ……のぉ!!!」


 そこらの剣で、聖剣をまともに受け止められるわけがない。

 なので、聖剣を上から叩いて軌道を逸らそうと試みるのだけど……


「あぐっ!?」


 彼女の剣筋を捉えることができず、僕は、再び吹き飛ばされてしまう。

 何十メートルも飛んで……

 地面を何度も何度もゴロゴロと転がり、ようやく止まる。


 寸止めをしてくれているため、やはり、衝撃波で吹き飛ばされたのだろう。

 切り傷はないのだけど、代わりに、全身が痛い。

 衝撃波と吹き飛ばされたダメージの両方だろう。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」


 これが、本気のソフィア。

 剣の頂点に立つと言われている、剣聖の力。


 ……怖い。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] フェイトの戦闘力が安定しませんね。あまりにも強弱の差が有り過ぎます。潜在能力を顕在化出来て居ないとしても、ソフィアと良い勝負をする位の実力が無いと、ここまで生き残れ無かったと思うのです…
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