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111話 飲食店の出会い

「ここは飲食店でしょ! ナンパがしたいなら、そういう店に行ってくれる? あ、でも、あんたみたいな顔じゃあ、無理か。お金でしか相手してくれないものね。かわいそう……あ、ダメ、泣けてきちゃう。でも、同情はしてあげないわ! 顔がダメだとしても、それはそれでいいの。私、内面を重視するタイプだから。でも、あんたはダメダメのダメ。心がとんでもないブサイクよ! だから、とっとと家に帰りなさい!」


 リコリスの怒涛の攻撃。


 というか……

 そこまで言うの? と、僕もちょっと引いてしまう。

 あと、アイシャの教育に悪いから、少し控えてほしい。


「……」


 大柄な男はポカンとして、


「なんだとてめえ!?」


 やや遅れて、ものすごい勢いで罵倒されたことを理解したらしく、激怒した。


 リコリスは、ササッと僕の後ろに隠れる。


「さあ、やっちゃいなさい、フェイト! 正義の裁きを与えるのよ!」

「なんかもう、色々と台無しだよ……」


 煽るだけ煽っておいて、最後は僕に頼るなんて。

 プライドはないのだろうか?


 まあ、リコリスなら……


「プライド? そんなもので飯が食えるのなら苦労はしないわ!」


 なんて、言いそうだけど。


「このチビをかばう気か? なら、まずはてめえからだ!」

「うわわわ」


 いきなり殴りかかってきた。

 なんて気が短い。


 アイシャがいるため、避けることはできない。

 男の拳を手の平で受け止める。


「な、なに!? 俺の拳を受け止めただと?」

「あのー……今のはリコリスも悪いと思うから、お互いさま、っていうことで手打ちにしませんか? ほら、こんなところで騒ぐわけにも……」

「うるせえ! バカにされたまま、黙っていられるかよ!」

「……仕方のない人だな」


 お酒を飲むなとは言わないけど、飲まれないでほしい。


「がっ!?」


 足を払い、倒れたところに拳を叩き込む。

 一応、手加減はしておいた。


 男は苦しそうな声をこぼして……

 そのまま気絶する。


 すると店内から、よくやった、いいぞ、なんていう歓声が湧き上がる。

 どうやら、みんな、この男の行いに辟易としていたらしい。


 店の人にも感謝されてしまい、僕達に対してはお咎めなし。

 一方、男は、店員が通報してやってきた騎士によって連行されていった。


「ふう……これで、ゆっくりとごはんを食べられるかな」

「お腹、減った……」


 のんびりと、アイシャがそんなことを言う。

 この子、意外と大物になるのかもしれない。


「ねえねえ」


 ふと、男に絡まれていた女の子に声をかけられた。

 女の子は興味津々という様子で、キラキラとした顔をしている。


「助けてくれて、ありがとう」

「ううん、大したことはしていないよ。それに……」

「それに?」

「キミなら、僕の助けなんていらなかったんじゃないかな、なんて」

「へえ」


 女の子は感心したような顔に。

 そんな反応をするということは、やっぱり、助けは不要だったのだろう。


「ボクが強いってこと、知っていたの?」

「いや、なにも。キミのことは初めて見るし……ただ、一瞬だけど、ものすごい圧を放つから、強いのかな、って」

「ふーん……お兄さん、鋭いんだね。ねね、ボクも一緒していいかな?」

「えっと……」


 リコリスとアイシャを見ると、問題ないというように頷いた。


 アイシャは、少し人見知りをしてしまっているのだけど……

 でも、いつまでもそのままというわけにはいかない。

 ついでという感じで悪いのだけど、この子で練習をしてもらおう。


「うん、いいよ。一緒に食べようか」

「ありがと♪ あ、店員さん。ボク、こっちの席に移るから、注文したヤツもこっちにお願いね」


 女の子は、こちらのテーブルに移動して、


「あ、自己紹介を忘れていたね。ボクは、レナ。レナ・サマーフィールド。よろしくね」

「僕は、フェイト・スティアート。こっちはリコリス、そして、アイシャだよ」

「ふふん、よろしくしてあげるわ!」

「よろ、しく……お願いします」

「うんうん。みんな、よろしくねー!」


 レナは、とても人懐っこい性格をしているみたいだ。

 会ったばかりなのに、長年の友達のような感じで接している。


 でも、不快な感じはしない。

 むしろ、その距離感が心地いいとさえ感じてしまう。

 これは彼女の才能なのかもしれないな。


「フェイトって、すごく強いんだね」

「そんなことないよ」

「えー、謙遜は良くないと思うな。だって、あんな大男を、一発で倒しちゃったじゃん」

「うーん……そこそこ鍛えているとは思うけど」


 今でも、毎日、ソフィアに訓練をつけてもらっている。

 だから、それなりの自信はついてきた。


 でも、まだまだだ。

 ドクトルのような強敵もいるし、世界には、僕の知らないとんでもない相手がゴロゴロしているに違いない。


「強い、って言えるような自信は、まだないかな」

「そうなの?」

「僕よりも強い相手なんて、それこそ星の数ほどいるだろうし……」


 なにより、一番身近にいる存在……ソフィアが、とんでもなく強いからね。


「ただ、いつか、胸を張って僕は強いんだぞ、って言えるようになりたいから、そのための努力は欠かさないよ」

「おー……なんか、かっこいいね」

「そ、そうかな?」

「うん、すごくかっこいいと思うよ。そんな風に言える男って、なかなかいないと思う。ほら、さっきのヤツみたいに、男って妙にプライドが高かったりするじゃない?」


 同じ男として、耳が痛い。


「でも、フェイトはそんなことないからね。自分がまだまだ、っていうことをきちんと認めた上で、さらに高みを目指している。そういうところは、すごくかっこいいと思うよ」

「あ、ありがとう」


 ここまで褒められるなんて、ソフィア以外で初めてだ。

 ついつい、顔を熱くして照れてしまう。


「うーん」


 レナは、じっと僕の顔を見つめる。


「……うん、決めた!」

「どうしたの?」

「フェイト、ボクの彼氏にならない?」

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] おかーさーん! 急がないと旦那がNTRちゃうー!!(まぁフェイトなら断ると思うけど)
[一言] 逆ナン?逆ナンですか?
[一言] もしここに、ソフィアがいたら ソ『フェイト・・・その女の人は誰ですか。(怒)』 凄まじい圧が、フェイトを襲う。 リコリスは、アイシャを連れて遠くへ 修羅場になるので
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