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106話 力のテスト・その2

 力比べをするかのように、アクセルと鍔迫り合いを繰り広げる。


 剣の柄をしっかりと両手で握り、右足を一歩前に出して踏み込み、力で押し切ろうとする。

 ソフィアは、僕はSランク並の身体能力があると言ってくれた。

 なら、多少、強引にいくことは問題ないはず。


 しかし、アクセルも負けていない。

 力には技術で。

 そう言うかのように、こちらの力をうまく受け流してしまう。


 手応えはゼロ。

 空気を切ったかのように、スルリと剣が抜けてしまう。


 その隙を見逃すことなく、アクセルは斬撃を叩き込んでくる。

 でも、それは見えていた。

 木剣を横にして、盾のように構える。


 アクセルの斬撃を受け止めた後、足払いを繰り出す。

 簡単に倒れてくれるほど甘くはないのだけど、それでも、これ以上の攻撃はまずいと思わせることができて、アクセルは一度後ろへ引いた。


「その程度か、小僧。技術はなく、力だけで押し切るなど、剣士にあるまじき愚行! 誰に剣を教わったか知らぬが、貴様もその師も、どうしようもないな!」


 僕の問題点をしっかりと見抜いたらしく、エドワードさんがそんなことを言うのだけど……


「……お父さま。フェイトに剣を教えたのは私なのですが、へぇ……私はどうしようもないのですか。どうしようもない娘なのですか」

「え」


 僕に剣を教えてくれたのは、ソフィアなんだよね……

 なので、当然、ソフィアはものすごい不機嫌に……というか、殺気すら放つ。


「エドワードさん。僕の剣の師はソフィアですが、僕がまだまだなのは修行途中だからです。なので、責めるのなら僕だけを」

「う、うむ……」


 ソフィアの殺気に当てられ続けているせいか、エドワードさんは、ダラダラと汗を流していた。

 よくよく見てみたら、エミリアさんにも殺気をぶつけられていた。

 妻と娘に、「ふざけたことを言うなら殺す」と言われているようなもので……

 ちょっとかわいそうだった。


「どこ見てやがる!」

「油断はしていないから大丈夫!」


 アクセルが斬りかかってくるけれど、それをしっかりと受け止めた。

 ソフィアとの未来がかかっているのだから、油断なんてしない。


「ちっ、やるな。剣技はまだまだだが、身体能力がデタラメに高いな」

「ありがとう。アクセルも、剣はすごいね」

「まあな。これでも、何年も道場に通っているからな。さすがに、素人には負けてられねえさ」

「あれ? 僕が剣を握って少しだっていうこと、話したっけ?」

「こうして、やりあえばわかるさ。剣筋は、ソイツの人柄が出るものだからな」

「へー」


 試合の最中なのだけど……

 こうして、アクセルと話をするのは楽しい。


 思えば、同世代の同性の友達がいなかったからなあ。

 アクセルならぴったりだ。

 試合が終わった後、友達になってくれないかな?


「よし、がんばろう」


 そのためにも、まずは勝たないと。


「はぁっ!」

「うらぁっ!!!」


 互いに気合を吐き出して、何度も何度も剣をぶつける。

 激突を繰り返して、技をぶつけ合う。


 僕は力に優れていて。

 アクセルは技に優れている。

 一長一短で、なかなか勝負の決め所が見つからない。


 うーん、強敵だ。

 ソフィアと出会ったばかりの僕だったら、たぶん、すぐに負けていただろう。


 でも、今は、それなりの修羅場を潜ってきたという自負がある。

 それが僕を成長させて、強くしてくれていた。


「神王竜剣術……」


 僕は、一度大きく後ろへ引いて、剣を上段に構えた。


 ここで勝負をつける。

 その意思、気合を入れて、剣の柄を強く強く握る。


 それを見たアクセルは、ニヤリと笑う。


「いいな……うん、すげえやりがいがあるよ、お前。ここで潰すのは惜しいが……でも、俺も剣士だ。負けられねえよ!」


 アクセルも剣を上段に構えた。

 同じく、勝負をかけるつもりなのだろう。


 うん、予想通り。


「壱之太刀……」


 男同士しか通じないような、妙な共感。

 互いに小さく笑い、


「「破山っ!!!」」


 同時に、必殺の技を繰り出した。

 極大の一撃が真正面から激突する。


 ガァンッ!!!


 ただの木剣なので、技の威力に耐えきれず、共に半ばからへし折れてしまう。

 アクセルは、ちっ、と舌打ちをして……


 一方の僕は、さらに一歩、前に踏み出した。


「なっ!?」


 互いに技をぶつければ、こうなるだろうと予想していた。

 だから、迷うことなくすぐに動くことができた。


 アクセルの懐に潜り込むと同時に、肘打ちを見舞う。

 彼の体がぐらりとよろめいたところで、その眼前に折れた木剣を突きつけた。


「勝負あり……だね」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] エドワードは良いところ出そうとするが、そのたびに娘と妻に伸されてええとこ無しですな・・。 なんでこうなった??
[一言] 大戦相手の力量をちゃんと測れるアクセルくんが素敵です。それに比べて父様は本当に剣王なのか疑うレベルですね。
[良い点] アクセル・・。今後も友として出てくれるといいな。
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