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101話 壮絶な親子喧嘩

 ダンッ!!! という音と共に、ソフィアが消えた。


 いや、消えたわけじゃない。

 視認できないほどの速度で駆け出したのだ。


 その行き先は……


「はぁっ!!!」

「ふんっ!」


 ソフィアは、エドワードさんに向けて全力で剣を振る。

 抜き身の剣。

 しかも聖剣。

 かするだけでも大怪我は免れない。


 そんな剣聖の一撃を、エドワードさんは難なく受け止めてみせた。

 ミシリと、片足が道場の床に沈むものの、それだけ。

 剣を折られることなく、断ち切られることもなく、防いでみせる。


「はぁあああああっ!!!」


 ソフィアの連撃。

 音の速さで剣を振る。


 それだけじゃない。

 右、下、上、左、斜め下、斜め上……一撃ごとに剣筋を変化させて、ありとあらゆる角度から刃を叩き込む。

 並の者であれば、なにが起きたかわからないまま、全身を細切れにされていただろう。


 しかし、エドワードさんは並の者じゃない。

 リーフランドの領主であり……そして、神王竜剣術の師範だ。

 その驚異的な身体能力で、ソフィアの攻撃を全て防いでみせる。


 ソフィアは一度離れて、ニヤリと笑う。


「久しぶりに剣を合わせましたが、さすがお父さまですね。これだけの攻撃を叩き込んで、かすり傷一つ負わないなんて」

「日々、鍛えているからな。ソフィアも、なかなかのものだ。旅に出たことで、腕が鈍らないか心配していたが、それは無用のものだったな」


 エドワードさんもニヤリと笑う。


 ……この二人、戦闘狂なのだろうか?

 とても失礼なのだけど、ついついそんなことを考えてしまう。


「す、すげえ……お嬢さま、あれからさらに強くなってるぜ……」

「っていうか、お嬢さまと師匠の真剣勝負が見られるなんて……」


 アクセルとリナを始め、門下生達は、突然始まった勝負に驚きつつ、見入っていた。

 二人の剣に見惚れているみたいだ。

 誰も止めようという発想には至らないらしい。


「ねえ、フェイト。これ、止めなくていいの?」

「止められると思う?」

「止められないわよねえ……」


 二人の間に割り込んだら、そのままスパッと斬られてしまうだろう。


 ソフィアなら、寸止めしてくれると思うけど……

 エドワードさんのことはよく知らないんだよね。

 そのまま斬られてしまうことも考えられる。


「ねえ、おとーさん」


 アイシャが、不安そうな顔をしてこちらを見上げる。


「おかーさん、どうして戦っているの? あの人、おじーちゃんなんだよね?」

「えっと……」


 ものすごく回答に困る。

 本気で、しかも真剣でケンカをする親子なんて、まずいないからなあ……


「あれは、二人なりの挨拶なんだよ」

「ご挨拶?」

「そうそう。二人は剣を習っているから、ああして勝負をすることで、お互いの健康を確認するというか……つまり、そんな感じ?」

「そうなんだ」


 苦しい説明だと思ったものの、アイシャは納得してくれたみたいだ。

 助かった。


 でも、真剣で切り合うところは不安に思っているらしく、尻尾がしゅんと力なく垂れている。


「おいで、アイシャ」

「ん」


 少しでも落ち着いてほしいと思い、アイシャを抱き上げた。

 アイシャも僕に抱きついて、甘えてくれる。


「む」


 ちらりとこちらを見たソフィアは、とてもうらやましそうな顔をした。


 アイシャを抱っこしたいのなら、今すぐにケンカを止めてね?

 そう思うのだけど……


「……お父さま、そろそろ終わりにしますね」


 ソフィアは勝負を止めるという考えには至らず、決着を急ぐという、とんでもなく武闘派な思考を叩き出してみせた。

 どうして、そうなるの……?


 いや、まあ。

 ソフィアは、幼い頃からこんな感じなんだけどね。

 穏やかな令嬢に見えて、実は気が強く、我も強い。

 一度始めた勝負を途中で放り出すなんてこと、絶対にしないだろう。


「ふんっ。剣聖という称号を得て自惚れたか? その程度の剣では、儂には到底届かぬ」


 今のやりとりで、その程度、と言ってしまえるエドワードさんは相当なものなのだ。

 ソフィアは、どうするつもりなのだろう?


「その程度、ですか……ふふっ」

「なにがおかしい?」

「お父さまともあろう方が、対峙する者の実力を見誤るなんて」

「なに?」

「……少しだけ本気を出しますね?」


 今まで全力じゃなかったの!?


 誰もが驚く中、ソフィアが剣を鞘に収めた。

 勝負を中断するわけではない。

 その状態で、右足を前に出して半身に構える。


「神王竜剣術、四之太刀……」


 超高速の抜剣。

 音速……いや、神速の一撃。


 ギィンッ!!!


 なにが起きたのかわからない。

 なにも見えなかった。


 気がつけば、エドワードさんの剣が折れていて……

 そして、ソフィアはエドワードさんの背後を取っていた。


「……蓮華」


 これで終わり。

 そう言うかのように、ソフィアは、再び剣を鞘に収めた。


「ぐっ……み、見事だ」


 エドワードさんは膝をついた。

 苦悶の表情を浮かべているのだけど……

 でも、娘の成長を喜んでいるようにも見えた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] ソフィア最強!! お義父さま(笑)とフェイトではどちらの方が強いのか? 下手な結果になってしまうと、面目丸潰れなので、エドワードさんはフェイトと戦わない方が良いかも・・・ (門下生の手前、…
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