表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

ちょいと脅かしてやろうぜ

「あら、ローランスさん。昼間から珍しいですね」


「おう、ちょっと野暮用があってな」



 場所は、冒険者ギルド内の酒場。かつては都一といわれた踊り子だか旅芸人だかが旦那に先立たれ、余生の暇つぶしとばかりに経営している。

 なんでだかは知らんが、ギルドには酒場が一緒にあり、そこの主人は大体そんなもんだと相場がきまっている。


 冒険者に酒が入ると必ずといっていい程揉め事を起こすが、それ以上に利点もある。冒険者同士の情報交換や交流というものは、こういった場所で行われるものだ。


 まあ、俺の目的は単なる暇潰しだが。



「おい! なんでテメエがここにいるんだ!」



 おっと始まったかな?



「あらあら、喧嘩かしら? 若いわねぇ」


「そうみたいだな」



 何が起こったなんてのは知ってるが、説明する必要がないからすっとぼける。

 どっちにしたってすぐ分かるしな。



「ぼ、僕がどこにいるかなんて関係ないだろ!」


「ンだと、役立たずが偉そうに!」



 ビビってる方はエミリオ、怒鳴ってる方はエミリオが所属してたパーティのリーダーか。んで、パーティリーダーの後ろには気の強そうな女が二人控えている。

 流石にリーダーをしてるだけはあるか。若いがガタイがよく、よく鍛えられている。細身のエミリオと並ぶと顕著だな。


 周りの冒険者達が、興味深そうに喧嘩する二人を見ている。

 血の気が多い連中は、必ずこういったものを面白がる。

 そんで賭けとか始めて、ギルドマスターに大目玉くらうまでが様式美だ。

 堅物マスターは揉め事を嫌う。



「き、君達はもう僕の仲間じゃないだろ! 何を言われる筋合いもないはずだ!」


「テメエがここにいると迷惑なんだよ! 人様に迷惑かけんじゃねえ!!」



 中々好き勝手言いなさる。

 無茶苦茶だ。



「なんで、ぼ、僕に気を遣ってくれない君達に気を遣わなくちゃならないんだ!」


「勝手な事言うな! 出てけって言ってんのが分からねえか!」


「——っ」



 あぁあぁ、エミリオの奴、泣きそうじゃねえか。

 これはちっと荷が勝ちすぎたかな?


 もう少し様子を見て、駄目そうなら助け舟を出してやるか。



「テメエを摘み出すなんてのは簡単なんだぜ!? 俺は親切で出てけって言ってやってんだよ! テメエも痛えのは嫌だろあと思ってな!」


「う、嘘をつくなよ! 君が僕の事を考えるわけないだろ!」


「なんだと……っ!!」


「僕の事を考えてくれる奴が、役立たずだとか追放だとか言うはずないじゃないか!」


「こっちが下手に出てればいい気になりやがって!」



 出てたか? 下手に。

 ともあれ、どうやら心配はいらないようだな。



「テメエが役に立たねえのはホントの方だろうが!! だいたい追放の方は……!」


「よせ、バートン」



 ずっと後ろに隠れていた女のうちの片方が、パーティリーダーの言葉を遮った。あの筋肉達磨バートンってのか。一応覚えといてやろう。



「だがよ、ハリエット……」


「聞こえなかったのか? 私は黙れと言ったんだ」



 長い金髪を後ろで束ねた美人だが、どうも目つきが悪すぎる。下手な男がよってったら食い殺されちまいそうだ。

 だが、見た目ほど粗暴じゃあないみたいだな。

 少なくとも頭の方は、バートンよりもずっと良いみたいだ。


 ハリエット。コイツは覚えとかねえといけねえ名前だな。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「すまないな、エミリオ。私に免じて許しておくれよ」



 恐らく、実質的なリーダーはハリエットだろう。

 筋肉達磨みてえなボンクラにチームの運営が務まるわけがないもんな。


 ここを静かにおさめようって姿勢は確かに正解だ。


 まあ、ただ一つダメ出しをするとしたら、“遅すぎる”ってところだな。



「何をしているのかな?」


「……!?」



 はっは、みんな驚いてら。

 この日この時間にいる事なんて有名だろうに、後ろめたい連中はどいつもこいつも大慌てだ。



「ま、マスター!?」


「ギルドマスター、ロザリック・スチュアートじゃねえか!?」



 めっちゃ煩い。

 マスター怒ってんぜ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ