毎度! ローランス職業案内!
冒険者になるやつって馬鹿だと思う。
正直危険だし、身入りは安定しない。
それに比べてうちはどうだ?
利用客はそうそういなくなったりしないし、色んなところにぶっといコネクションが作れる。
これほど理想的な職場はないと思うね。
まあ、真似されると嫌だからそんな事を言ったりしないがね。
「毎度! ローランス職業案内です!」
今日も一人の客が来た。
ヒョロっちいガキだが、こんな棒切れでも欲しいという店はごまんとある。
「お願いします! 僕に仕事を紹介してください!」
「あいよ、喜んで」
ローランス職業案内は、このクリスティア王国唯一の職業斡旋所だ。
いろんな商会や個人店と契約して、働きたいってヤツを紹介している。
仲介料をもらう事になるが、そこは俺の目利きを信用してもらうって事だな。ちゃあんと職業にあったヤツを紹介してやるんだ。
「どんな仕事をお探しで?」
「えっと、僕は得意な事とかなくて、どんなのとかは……あ、備品整理とかは慣れてます! 前のパーティでよくやってました」
「? 冒険者だったのか。なんでまたこんなとこに?」
冒険者なら、ギルドに行けば沢山の依頼があるはずだ。
わざわざ仕事の斡旋なんて受けなくても、それで日銭を稼ぐのが一般的な生活だろう。
コイツみたいに若いならなおさらな。
「いや……実は、追放されてしまって……」
「パーティをか?」
「いいえ、ギルドを……」
何言ってんだコイツ?
「何をしたらギルドなんて追放されるってんですか」
「いや……役立たずだからって……」
そんな理由では追放なんてされないだろ。
「詳しく話しな」
「え……?」
「話せ」
「あ、はい……」
◆
「…………しょーもな」
「え!?」
早い話が、支援職はいらねえ、だとよ。
しょーもな過ぎてあくびが出るわ。
「よくいるんだよ、初心者にはな。回復職とかの支援職を役立たずだと思う輩がよ。ちゃんと仕事してねえように思うんだろうな。馬鹿馬鹿しい」
「え、で、でも、僕はギルドから追放命令が出ました! やっぱり役立たずなんじゃあ……」
「んなわけねぇだろ」
だいたいギルドの追放命令ってなんだよ。
聞いた事ねぇや。
「その追放命令ってのはどうやって知らされたんだ」
「え? パーティリーダーに手紙で……」
「なんでそんな重要な事が手紙なんだよ、直接言うだろ普通。しかも、直接渡すでもなく人伝だ」
「た、確かに……」
「多分嵌められてるぜ。ギルドには追放なんて制度はねえんだよ。よっぽどの犯罪者を除名したってのは聞いた事あるがな」
俺の言葉に、目をまんまるくしてやがる。
かなりの世間知らずだな。田舎もんか?
「坊主、名前は?」
「え、エミリオです」
「ようし、エミリオ。今から俺が言う事をやってこい。多分ちょいと面白いぜ」