7.「勇者ってずるい!」セキュリティー編
「勇者ってずるい!だからこっちも少しずるいことをやってみる!」
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王の声が響いた。
「はいはいなんです」
魔王の側近は棒読みで返した。
「聞いてよぉう!」
「はいはい、そんなガチ涙目で言わなくても・・・なんでしょうか?」
「考えてみれば、この城普通でなくてもいいじゃん!」
「はぁ?」
「というわけで、勇者こさせないように城を改造して、その周辺に罠をたんとしかけよう!」
「そんなことしたら、味方も被害ありまくりでしょう?というか、魔王の城迷路にしたら格好良くない?って前やりましたよ。四天王から死ぬほど非難されたじゃないですか!」
「あー。四天王の水なんか迷って、半べそかいてたな。それ土の奴がからかったら顔真っ赤にして、ぼこぼこにされてたよな。で、火の奴がまぁまぁってなだめて、風の奴なんかぷるぷるから震わせて笑っていたよな」
「いや、あの地獄みたいな修羅場はそんなほのぼのした思い出じゃ・・・風が震えてたのは水に怯えてたからですし・・・そもそも、魔族だけかからない都合のいい罠なんてありませんよ。トラップハウスなんかにしたら私達だってまともに歩けませんし、日常生活すら危ないです」
「で、ですよねー」
「ですが、魔王城のセキュリティを高くするのは賛成です。日常生活に困らず、侵入者が困る程度の罠ならばお任せを」
数日後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王が側近に質問をしていた。
「勇者もうすぐ来るって?」
「いや。当分来ませんよ」
「どうして?」
「入口に大型魔物数十体配置して、逃げ道の先にトラップ地獄を配置してますから。大型魔物は身内には敵対しませんから。安心です。あっ、そこは安全地帯じゃないんでーす。やった罠5連鎖!全員死んで転送されました」
「あらら。すげぇ、罠が連鎖するってこういうことを言うのか・・」
「趣味の罠パズルがこんな形で役に立つとは思いませんでしたけどね」
半日後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に数名の男女が息を切らせてやってきた。
「はぁはぁ・・・魔王・・・ようや・・・」
「よく来た極大爆烈閃熱呪文!」
どごぉっぉぉぉん!!
「さぁ!今のは歓迎の花火だ!さぁ!来い勇者って・・・あれ?勇者は」
「消えましたよ。今の攻撃で」
「うそっ!弱っ!」
「というか魔王様が強すぎなんですよ。罠で疲労困憊させておいて、元から強いのにドーピングと補助アイテムに最強の武具と防具に魔法でしょう。しかも、魔王様が“自分のフィールドでやるならとことん自分に有利な条件にしようぜ”とか言うもんですから、部屋全体に魔族専用の強化魔法陣と、敵専用の弱体魔法陣も何層に張っていますから。正直オーバーキルすぎです」
「・・・・・・でも。まぁ、また復活するわけだし。今度はまた強くなるんだろうなぁ」
「まぁ、そうですね」
「その時までにもっと準備をしておくぞ!側近!」
数週間後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王と側近が暇そうに会話をしていた。
「・・・勇者来なくね?」
「そうですね。とっくに再戦に来てもおかしくない時間ですが」
「もしかして・・・やり過ぎた?」
「いや。それでも女神の加護は生きているので、仲間諸共再生されてるはずですよ。想像以上に魔王様が強かったから準備も念入りなんですよ」
「それにしても。考えると女神もえぐいなー。勇者とその共がぐちゃぐちゃになっても、蘇らせて勝つまでひたすら戦わせるわけだろ?」
「確かに無間地獄ってやつですかね」
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