6.「勇者ってずるい!」各個撃破編
「勇者ってずるい!」
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王の声が響いた。
「はいそうですねー、それで書類はどうしました?」
魔王の側近は呆れた声で聞き返した。
「あんな地味に大変な作業やってられっか!もう今まで通りでいいよ!じゃなくて、別の話!こちとら玉座に座って、魔王城しか行動範囲ないのよ?なんで勇者の行動範囲は世界中なのに、なんで、こちらだけ引き籠りなんじゃ!暇なんだよ!」
「戦略的な話じゃなくて、個人的理由ですね?でもトップが拠点から離れるのも問題ありですよ。指示も指揮もできないし、何より頂点の魔王様が魔王城にいないと、魔物達も不安がります。人間の国の王も大抵城いるじゃないですか」
「けどさー・・・ほら勇者が世界中練り歩いて、虱潰しに魔物倒していったら、世界的に魔物の数減って、反魔族勢力増えるじゃん?こちとら地域指定して、分散して手下を送るしかできないのに。大体、魔王に匹敵する戦力が世界中うろ付いたら、四天王ならともかく他の魔物はたまらないよー」
「むむむ。確かにそうですね」
「だろう。先代とかってその辺りの様式に固いから、ぜーったいに城から出なかったけどさ。今は俺が魔王だし別にいいじゃん。ってことで、うちらも旅に出て勇者の真似ごとしようぜ」
「は?」
「だって出るなら側近も一緒でしょ?」
「へ?いやいや私には魔王様不在の間、軍の指揮を」
「そんなの。四天王に任せようぜ。火とかに言えば喜んでやるって」
「・・・一応聞いてみますよ」
・・・・・
「即答でOKでましたよ」
「ひゃっほーい♪」
「とはいえ、そんなに長く離れられません。時間的にも場所的にも制限はありますよ」
「外に出られればいいってそんなの。そーれ突撃だ!」
2週間後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王が叫んでいた。
「勇者ってずっるい!」
「そうですか。あぁ、はい命令書書いてください」
「聞いて!」
「なんですか?この間暴れまくって、敵勢力ぼっこぼこにして、その区域の担当からすっごい微妙な顔されたじゃないですか」
「喜んでたよな」
「嫌がってたんですよ!今まで長年かけて侵略頑張ってたのに、一瞬でパーですもの。しかも適当に暴れて破壊しただけで、残存戦力はまだまだ残っていますし、その他の沢山の面倒な処理は丸投げ。そりゃぁ、不愉快でしょう。流石に魔王様に面と向かって文句も言えないせいで、苦情が上司の四天王経由でがんがんきてますよ。まさか、その上でもっと暴れたいなんていうんですか?」
「で、でもでも!魔王軍の勢力ちょっと勢い増したでしょ!?」
「まぁ、もともと押されきみでしたしね」
「・・・」ドヤァ
「でも、魔王様の蹂躙で諍いあっていた人間側の国同士が同盟結びましたからね。相手の戦力もアップしましたよ。まぁ、イーブンにはなりましたかね」
「・・・」ショボーン
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