5.「勇者ってずるい!」物量編
「勇者って・・・!」
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王の声が響いた。
「ずるいよなー」
魔王の側近は声真似をして言葉を継いだ。
「側近ー。セリフとるなよー。でもこのやり取りツーカーって感じでいいなー」
「ま、まぁ、側近ですからねー。それで何がずるいんです?復活の石の装飾品の件考えなおしたんですか?」
「ないない。製造過程で部下の命を数千数万犠牲にするとか、さすがの魔王様もドン引きだもの。まぁ、それは自動回復アクセサリーと回復アイテムを多めに持つことで妥協したわ。じゃなくて、勇者たちだよ。あいつら仲間多すぎじゃね?こっちは1人で相手するのよ?」
「そうですか?別に1個師団ならともかく、10名にも満たない数でしょう?別段多くないじゃないですか。普通の魔物は大抵徒党組んでいますし、中には仲間呼ぶものもいますよ。人数でいうなら私たちの方がずるではないかと」
「いやいやいや。普通の魔物はいいけどさー。ほら、幹部級とか隊長級って何かとワンマンプレイ多いじゃん。あいつらクラスを束ねれば、無敵じゃね?」
「まぁ、一応は」
「なら決定。まずは東のエリア長達に通達だ」
数日後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間で側近が魔王に例の件を報告していた。
「で?なんで負けたのよ?」
「当たり前ですが、互いにどっちが上か揉めて喧嘩しまくる上に、指揮系統が乱れまくったからですよ。揉めて弱って連携が一切とれず、混乱しているところをボコられました」
「一斉にかかればいいっていっておいたのに」
「一番手柄が欲しいからって、また揉めたみたいですよ。中でも悲惨なのは火の魔物と氷の魔物が一緒になったところですね。反対属性同士なので弱体化したあげく、同時に攻撃したら相殺して届かず、一方的にぼこぼこにされました」
「火と氷が合わさって究極の無属性になったりしない?」
「なるわけないじゃないですか。ただ無くなるだけですよ。というわけで。どうぞ」どささっ
「なにこれ?身長くらいの高さあるんだけどこの書類」
「揉めないようにするため、命令書と各魔物に対する委任状と、魔物の部族の長への説明文などなどです。こういうのはきちんと手続きすれば大丈夫です」
「ま、まぁ、これで強くなれば・・・」
「言っておきますがこれは東の一エリアのみです。全体となるとこの数十倍はありますよ」
「・・・」
「書き終わったら言ってください。私それまで罠パズルでもやってますから。あっ、ここはこうした方がトラップ4連鎖になるわね♪」
「手伝ってください!」
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