2.「勇者ってずるい!」アイテム使用編
「勇者ってずるい!」
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間に魔王の声が響いた。
「は?」
魔王の側近は呆れた声で聞き返した。
「なにがです。というか木の実足りません?」
「あれはまぁもういい!死ぬほどまずい物を腹が膨れるほど毎日のように食べるなんて拷問だろ!もうこれ以上はいらないわ!じゃなくて、勇者の話だよ。あいつら回復アイテムとか使うじゃん。あれずるいよ。こちとらアイテムなしでやってるのに。ドーピングで強くなったり、バンバン回復して、あげくに生き返るし。もう、チートじゃん」
「そういえば。そうですね。こっちもアイテムはありますが魔物達は使いませんね」
「だろう?」
「まぁ、使える知恵を持っている者が少ないのと、使えても“魔族の誇りが許さん”とか言う連中ばかりですしね」
「知力が足りないのは仕方ないとして、あんまり堅物すぎるのもなー。プライドにこだわって、敗北するのも本末転倒だろ?ちょっと柔らかくしようぜ。先代も先々代もその辺り頭硬かったしな。ここらで改革してみようぜ」
「なるほど。意識改革ですね。流石は魔王様。わかりました。さっそく皆に訓示を行ってきます」
1か月後
魔族の領土の最奥の魔王城。その中の謁見の間で魔王が側近にアイテム利用の意識改革の結果の報告を受けていた。
「どうよ?アイテム使用の件?」
「うーん。反応悪いですねー。皆に促しましたが、知力が低い者はいわずもがな。結構の確率でポーションちょっと癖あってうめぇっていって戦う前に飲み干されました。あっ、お代わり欲しいって申請きてます」
「ジュースの差し入れじゃねーんだよ!却下じゃ!」
「で、知性高い上級魔族も狡猾な数名しか使いません。幹部級では四天王の土だけが喜んで了承してました」
「わかるわかる。あいつ。そういうの好きそうなタイプだし」
「ええ。前から考えていたけど他の幹部の手前、言いにくかったみたいですよ」
「だろうね。どうせ火のやつは『ふん!我はこのようなものに頼る軟弱ものではないわ!』とか言っててふんぞり返って、水のやつも『ふふん!美しいわらわが道具に頼るなど醜いまねができるか』とか言って冷笑してたんじゃね?」
「その通りです。というか、物まねそっくりですね」
「へへー。特技の一つよ。風の真似。『最速で倒せば問題ない・・・だろ?』」ドヤッ!
「あははははは!や、やめてください!そのドヤ顔ー」
「最後に『私まだ成長期ですから。まだ大きくなりますから』どう?これ?あはは」
「・・・おい、それ誰の真似ですかよ?」
「ひぃ!?ごめんなさい!調子こきました!その変な口調怖い!・・・そ、そそそそういえば、あのドーピング木の実を魔物たちに食べさせて魔物強化ってどうかね?」
「懐かしい話ですね。でもあれは前言いましたが魔族はたくさん摂らないと効果ないんですよ。知性低いとまずいからって言って食べないし、上級魔族も嫌がりますしね。結局、そんな理由と魔王様がいらないというので、人間たちに技術が漏れるのを防ぐため丸ごと封印しました。ですので、もう木の実はわずか在庫のみです。そもそもできたのも結構まぐれ的な産物でしたしねー」
「なんと」
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