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奇想小話 『耳年増』

そろそろ中秋の名月がやってくるので、人気が少なく良い場所が無いかとフラフラと近くのだだっ広い森の中を歩いていた。


鬱蒼とした空すら見えない森を歩きつつ、流石にこの辺にはいい場所は無いなと思いつつも散歩や探索の感覚で歩き続けていると、見た目の若い古めかしい着物を着た童顔の女性と出会った。


こんな森でとお互い警戒しつつも話してみるとどうやらこの女性齢100を越える方のようだ。


ただ服装などから魔女ではなさそうだった為、ここに来た事情を話すと共に、山姥やその他妖怪のたぐいかと思い確認の為に聴いてみると


「いえいえ、魔女なんて滅相もない。私はただの病患いの女性ですよ。」


と、長髪で隠された耳を見せた。

その耳だけは年齢に相応しい嗄れた老婆の耳であった。



「耳年増という病を知っておられですか?」



と聞き返された。この地に移り住んでから聴いたことがある。

若い女性がかかる病で耳だけが老婆のようになる病だ。

普通なら時間や人生経験と共に治ると聞いた。



肯定の頷きをすると

「元々私は、この人気のない森に住んでいて家は躾が厳しく箱入り娘として育てられた結果、治らずのままこの歳になってしまいまして」

「最初は治そうとしたんですが、はしたないと家族に止められ、女としての折返しになる頃には老いる事に恐怖に覚え、今ではこの有様といった次第です」

と少し自虐的に笑ったあと


「だから決して魔女なんかでは」

と手を左右に振り否定を示した。その後も何気ない会話を行い

私は先程は大変失礼したと詫び、ついでにこの辺に良い月が見える場所が無いか聞いた。

すると、私有地だがいい場所がある。家の者には言いつけておくからと大層見晴らしの良い山の丘を教えてもらった。


私は言うか言うまいか悩んだが、心の中でその老いすら受け入れられる相手が見つかる事を祈りながらその場を去った

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