奇想小話 『開く扉』
ある地方の神に手紙を届けに行った際、大きな壁の所にポツンと『アクトビラ』と書かれた扉があり
不思議に思って見ていると、通りがかった住民に声をかけられた
「旅行者かい?お前さん運がいいねぇ。コイツは普段は開かずの扉なんだけど、時折こうして『アクトビラ』に変わってね」
「お賽銭の要領で郵便受けにお金を入れて、手持ちの鍵で扉を開けるとね」
と実際にお金を入れポケットから取り出した束ねられた鍵の中から適当に一本選び扉を開けると、オルゴールが鳴り響く広い子供部屋が現れた。
扉の外側から部屋の中を見渡し、中には入れるのか?と聞くと
「入れるけど中から物は持ち出せないし、逆に物を置くこともできないよ。」
「後、人や生物が中に居たというのも聞いたことがないし、鍵毎に中の部屋も変わるよ」
なるほどと思いつつ今度は私がと、自身の家の鍵で扉を開いてみると
秋風香る何の変哲もないこじんまりとした部屋の風景が現れた。
残念そうな表情だったのか
「まあこういうこともあるよ。何本かやっていくと面白い部屋も見れたりで私のようにハマってしまう人もいるぐらいさ」
と、束ねられた鍵をジャラジャラと見せながら笑ってみせた