奇想小話 『一粒の砂山』
暇でやることがなかったので顔なじみの骨董品屋に行った所
店の中に砂山があった
正確にはあるように感じるだけだが、店の中に入るためには砂山をどうにかしなければならないという気がしてくる。
店の看板は『営業中』
となっているので営業しているのは確かのようだ。
まあ。暇だし、本当にどうにかしなければならないなら、それも一興だろう
そう思い店の中に入る
中では顔なじみの店員がアサリの砂を噛んだ時のような顔をして出迎えてくれた
「……効果なかったか?」
暇だったし、これも一興と思ったら入れたよ
「これ暇人には効果がないんだな。これ」
そういいながら、アクリルケースの中に入った一握りの砂山をシャカシャカと振りながら言った
んで、これは?という視線を送ると
「猫よけペットボトルの代わり」
そう言ってシャカシャカと砂山の音が鳴り響いた
「……砂山のパラドックスって知ってるか?」
砂山があるとしてその砂山から一粒の砂を取り除いても、それは依然として砂山のままである
それを繰り返して行ったとき最終的には砂粒が一粒だけになる。それは砂山であるか?
みたいな話だった気がする。
「大体合ってる」
「これは哲学世界という場所で砂山からひたすら砂粒を取り出し、最終的に砂山を砂山のまま砂粒にしたのがこれ」
「概念が概念として生きることが可能な世界あるいは概念と本体を分けることが可能な世界、あるいは何なんだろうなぁ……」
「ともかく、こいつはそいういうもんなんだよ。なんでもできる神が自分に持ち上げられない石を作って、持っている状態と持っていない状態を両立しているようなもの」
なるほど……今回はそれなりに売れそうと砂山を見つめていると
「お取り寄せ商品だから購入はできないぞ、売る先は決まっているんだ」
「普通は人除けとかに仕様したりするんだが……」
その言い方、なにか奇特な使い方を?
「さっき言っただろ?『猫よけペットボトルの代わり』って」
と顔なじみの店員がアサリの砂を噛んだ時のような顔をしながら言った
……その哲学世界では雨が明けた虹色の青空と満天の星空が両立した風景が見れるのだろうか?
と思いつつ、お金を払い店にあったお茶を飲みながら砂山を少し弄らせてもらった
今回のやつは続くかもしれないです。




