奇想小話 『映らない鏡』
仕事で鏡で有名な街を訪れた。
タイミングが良かったのか大通りで鏡のバザーをしており仕事帰りに様々な鏡を見ながら歩いていた。
本当の姿を見せる鏡、前世を見せる鏡、質問に何でも答えてくれる鏡、死に際の顔を映す鏡
など手を出せる値段の物から出せない物まで様々な鏡があった。
人ごみに負け休憩がてらにとふらふらと裏通りに入ると、場所の確保に失敗したような人が鏡を売っていた。
売りに出されている鏡を見てみると、並んでいる中に何も映ってない鏡があった。
これは何も映らないというのは語弊がある。認識できないが正しそうだな。と訝しげにそれを見ていると店員が口を開いた
「ああ、それは何も映らない鏡だよ。そういう鏡なんだ」
「実は目が見えない人用の鏡でな。目が見えない者には何かが見えるらしい。そのなにかはわからんが」
「ま、とにかくそういう物だ。お前さんにとっては無用の長物かもな」
とハハハと笑いながら店員は言った。
なるほど。と思いつつ裏通りにかすかに入って来る、試しに太陽の光を反射させたら
きれいに反射したので、鏡なのは間違いないようだ。
数分ほど悩んだが、なんとなく面白かったので売っている物の中で一番小さいものを選んで購入した。
「まいど、ま、世の中には見えないほうがいいものもあるってこった。それに何か見えるようなら、この世の外でも気を付けたほうがいい」
と意味深なことを去り際に言っていた。
今は埃が被らないよう手入れしつつ玄関においている。




