奇想小話 『丁稚揚げの話』
顔なじみの骨董品屋で適当に平積みされてある本から気になるタイトルの本を見つけた
-でっちあげの話-
カウンターで暇そうにしている店員に聴いてみると
タイトル通りとだけ言われた。物は試しと売り物である椅子に腰をかけページを開いた
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でっちあげとは今でこそ事実ではない虚偽・嘘偽りをいかにも事実であるかのように仕立て上げること、捏造することを意味する言葉となっているが、本来の語源を辿ると商人の見習いである丁稚が作っていた油揚げにたどり着く。
江戸時代初期ならともかく中期ともなると士農工商の格差や分別は徐々に縮まり、穢多非人でも無ければ割とどんな職につくことができるようになっていた。
武士や農民の効率的な育成はともかく工業や商人の育成方法は時間が流れるにつれドンドン効率が良くなっていきその中で生まれたのが丁稚揚げだ。
これは商人の見習い数人を一つのチームとして扱い、幾つかの銭を渡し朝油揚げを売るように指示する。
これには様々な要素がある。まず早起き、豆腐の仕入れ交渉、油揚げの加工、販売、精算、を鍛えることができ、それを朝に行うため昼には自らの店の手伝いをさせれると言った効率的な面がある。
その中でも販売、精算の所で『でっちあげ』の語源となる話がある。
1つ目は似たような事を行った各所で丁稚が販売時に嘘八百のウリ文句を言い丁稚揚げを売ろうとしそれが定着してしまったために
「これは嘘八百でできている。まるで丁稚が作る油揚げのようだ」
という言い方をされ、それが縮まり丁稚揚げ→でっちあげとなった。
もう一つは丁稚揚げの売上は全て帳簿を付け番頭や主人に収めるのだが、タダ働きは御免だと上手いこと帳簿を誤魔化し売上をちょろまかす丁稚が数多くいた。
そのごまかしが変化し今のでっちあげになったと言われている。
また、この帳簿の誤魔化しは番頭や主人は黙認しており、仕入れ交渉の上手い丁稚に次いで帳簿の誤魔化が上手い丁稚がよく出世したと言われている。
これが本当のでっちあげの話である。
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この部分だけ読んで本をパタンと閉じる。背表紙に書いてある値段を確認し、タイトル通りだったと言って買った。




