奇想小話『山の神の日1』
雪がちらつく12月頃、辺境の小さい山を管理している山の神に手紙を届けた。
冬の山という事もあり手紙を届け早々に帰ろうとした所、下山した先に住んでいる男にこれを渡して欲しいと頼まれ、手紙を渡すだけならと。容姿などを聞くと
宿すらないこの辺境の場所に辿り着き、さて今日の宿はどうしたものかと困っていた所に親切に泊まっていくと良いと一宿一飯を差し出してくれた好漢だった。
山の神にも惚れられる好漢か。
どちらにせよ尋ねるつもりだったので二つ返事で承知すると特に見る物も無かったので日が昇らぬ内に山を降り一目散に好漢の所を尋ね、山の神から貰った手紙を渡し昨日の宿の礼を改めて言った。
「この山の神からの手紙を届けてくれただけで十分よぉ!」
と大きな声で言うと受け取ったその場で手紙を読み始めた。しかし暫くすると神妙な顔をし始めたので何が書いてあったのか聴くと神妙な声で手紙の内容を伝える
「どうやら今月12日に山に登らねばならなくなった。がしかしその日は山の神が山にある木を数える日だ。おいそれと山に登ると木と間違えられてアチラに連れて行かれる」
「ここは何もない辺境の村と山だが、俺はここを気に入っている」
「確かに過去に何度か仕えぬか?と誘われはしたがこのような手に出るとは……非常に残念だ」
と少し寂しそうな顔をしたが直ぐにかき消え頭を捻り始めた。
「しかし、山の神に手を出したとなれば俺以外の人がいい顔をしないし何か被害が出るかもしれん。どうしたものか……」
最近、似たような事を経験した身だったので一宿一飯の恩もあるから協力することを伝え、何かできることはないか、頼れる人物は居ないか聞いてみた所、深くウンウンと唸りながら口を開いた
「神ではあるが、お前さんと同じように礼があるからいつでも頼ってくれと言ってくれた人物がいる」
「同じ山に小さい泉があるんだが、そこに住んでいる女神だ」
「前に山で芝刈りをしていた時に誤って芝刈り道具を落としてな。親切に礼を言った所、色々とあり道具と共に金と銀を貰ったのだ。」
「ただ、使う予定の無い身だ。むしろ道具を泉から拾った礼として、金と銀を使って社を作って奉ったら、いつでも頼ってくれと言われてな」
「……今頼れる心当たりはそれぐらいだ」
随分と鈍感なのかそれともただ平穏に暮らしたいだけなのか、少し苦笑いをしつつとりあえず頼れるだけ頼ってみようと今度は日が暮れぬ内に山を登り始めた。




