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奇想小話 『無し味』
仕事が一段落着いたので久しぶりに顔なじみの骨董品屋に行った所
なんとも形容しがたい顔をして何かを食べている店員がいた。
また面白そうな事をしているなとカウンターに近づくと、店員は何も言わず懐から袋に包まれた飴玉を差し出した。
その袋には小さく
-無し味-
と書かれてあった。
こちらが怪訝そうな顔をすると、口をモゴモゴさせながらまあ食ってみろよと言わんばかりの顔で返された。
……まあ物は試しかと袋を開け口に放り込むと、名前通り何も味がしなかった。唾液はでた。
本当に味は無いのかと、その後しばらく舐めて見たり噛んだりしてみたものの本当に全く味がしなかった。
飴なのか?単なるプラスチックのビーズか何かかと思ったが、確かに小さくなっているので飴であるのは確かなようだ。
がしかしこれはまるで……
と思い始めた時にコツンと店員はカウンターに石ころ一つ置いた。
「比較用にお試しください。だってさ」
その日、私は石の味というものを知った。




