奇想小話 『壁の手紙』
少々遠方に出掛けた際、用事も一通り終わり広場のベンチで休憩がてら屋台で買ったたこ焼きとミルクティーというアンバランスな組み合わせを楽しんでいたところ広場の真ん中にかなり大きめの赤レンガの壁が目についた。
たこ焼きを食べながら観察していると、行きゆく人々が新聞の切り抜きや今日のチラシ、自身で描いたであろう絵や文章を張ったり、その貼られた物を持っていったりとしていた。
そのような事が延々と続いていたので街の伝言板にしては何かおかしいなと思い広場を掃除している人に声をかけ聞いてみた。
「ああ、あれは伝言板だよ。でも伝言板にしては。うーんそうだな」
と難しい顔をして
「この街は昔、あの壁がズラーッと並び分断されていてね。分断された壁の向こうの行き来がしづらかったんだ」
「ただ行き来できる職の中に配達人が居てね」
「勿論正規の方法だと高額だったから貧乏人は代わりに壁に手紙なんかをこの壁に貼り付けたんだ」
「持っていってくれるかは配達人の善意だったけど、当時は殆ど持って行ったらしい。ただ数は多かったし直接届ける義務なんてないから、反対側の壁の方に貼り付けるだけだったんだけど」
「不思議と必要な人に必要な手紙が届いたんだ」
「特定の人物宛の用の物もだけど、不特定多数の人に書いた文章さえも届いたらしくてね」
「壁が不必要になり取り壊されそうになった時、記念品と奇跡の象徴として一部だけ残されて今でも使われているんだ」
「……もしかしたら、あの壁の中にあんたの必要な物があるかもね」
すべての話を聞き終える頃にはたこ焼きもミルクティーも無くなっていたのでなんの気無しに貼られた物を見ているとある文章が目に止まり、私は急いで帰路につくことになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
・・・一人の人間が足早に去った後
目についた文章は役目を終えたとばかりに風に飛ばされ壁のない青空へ飛んでいき何処かに消えた。
今日もまたこの壁に何かが貼り付けられ、そして剥がされていく




