奇想小話 『目覚まし時計』
顔なじみの骨董品屋で秒針どころか何も針が付いてない目覚まし時計が置いてあった。
気になって触っていると店員がニヤニヤしはじめたが表情をよそに、デジタル式やギミックがあるのかと思い弄ったが本当に何もなく。
こいつは一体どんなものなんです?と両手を上げ降参した。
「そいつは最近返却されたものでね。持ち主が必要になった時に鳴るようになっているんだ。」
「売ることはできないが、貸すことはできる。お代は結構だが借りてから返却するまでの間の話を聴かせてくれ」
と言ってきた。
危ない物でもなさそうだし物は試しと1週間だけ貸してもらうことにした。
その店員は3年ぐらい借りていてもいいよ。と笑って言っていたが、その言葉で一週間で必ず返そうと心に決めた。
使ってみると便利なもので朝起きなければ行けない時間、寝ると決めた時間を始め、近くのスーパーの半額時間や果ては推しの配信時間に鳴ってくれたりした。
便利な一週間が過ぎたが心に決めたこと惜しいとは思いつつも店員に返却し1週間と自身の感想を伝えた。
「満足してくれたようで何より、前回のやつは不満顔で返してきてからな」
と笑って目覚まし時計を受け取り、目立つ場所に置き直した。
不満顔?と不思議そうな顔をすると
「ああ、最初は便利に使っていたみたいなんだが、可愛い彼女ができた途端に四六時中鳴るようになってしまったらしくてね。壊れたと思って返却しに来たんだ」
と、うんともすんとも言わない時計を見ながら言った。




