奇想小話 『海の魔女の家-⑤』
身支度を整え、豊玉姫様会った結論から言うとのらりくらりと躱され、極上の軟禁生活に移行した。
精一杯好意的に解釈して説明すると、帰りたいというのはここに不満があるから。ならばもっと良い生活をさせれば帰りたくなくなるでしょう。
という話らしい。
確かに生活は前にいた場所よりも華やかでかつ、そこで知り合う軟禁生活者達は、みな賢者と呼んでも過言でない人ばかりで脱出の糸口が届くまでの間に興味深く面白い話を沢山することとなった。
初めて会った時、何十年も生きているのにシワひとつない姿をしていたので人魚の肉でも食べているのかと思い一応聞いてみた所、皆笑いながら部屋の隅に置いている箱を指差した。
その箱はパッと見は綺羅びやかではあるものの何年も触れてないのかホコリというか色褪せが発生していた。
「その中には四苦八苦、老いや時間が詰め込まれていているんだよ」
と、どこかで聞いたことのある話を賢者の一人はした。
私も『この世の外』から離れて『竜宮城』に来た時に渡されていたのである程度は察しがついてはいたが実際に目にすると不思議な感覚であった。
特にすることがない時は箱を見つめ
-正直、四苦八苦せず過ごせるこの場に単に帰りたいという衝動だけで戻っても良いのだろうか?-
という考えが何度もよぎったが、同時にそのまま過ぎ去って行った。
そして同時に、やはりまだ見ぬ世界を見ずにこのまま生きるのはやはり納得がいかない。それに何よりも私のいる場所は『この世の外』であり『竜宮城』ではない。
と思い。一途の望みをかけて魔女に一通の手紙を送ってもらった。
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親愛なるレディへ 少し変わったお茶を頼みます
古めかしく懐かしい匂いのする紅茶とマタタビの茶ををおねがいします
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できるだけ検閲されても大丈夫なような。手紙を書き特殊なお茶が飲みたいんだと召使いにゴリ押しし送ってもらった。
自堕落な生活を送って暫く経った後、丁寧にベッドメイクされた寝室に入った直後、どこか懐かしい寝息が聞こえた。
やっと来たかと思いつつ近づくとそこにいたのはベッドの中央でスヤスヤと眠る家によく来る猫又だった。
……意外な相手が来たな。と思いつつもできるだけ優しく起こした所
薄目を開け
「お前の家の縁側よりは寝心地が良い」
「だが、陽の暖かさがないな」
と体を起こしながら言った。初めて喋る姿を目の当たりし少し固まっていると
「ここは『この世の外』ではないからな」
と短く返されてしまった。
……随分と此方に慣れしまっていたようだな。と少し反省し、誰か来ても問題があるな
と頭を切り替え素早く身支度を整えた。
準備が整いいざ脱出しようとした所、猫又に呼び止められた。そして置いてある玉手箱を指差し
「そこの箱はどうする?持ち帰っても開けずにとって置けば四苦八苦に苦しまず不老不死だ。最もここにおいて置いても此方側で大事にとっておいてくれるだろうが」
頭がすでに『この世の外』に切り替わっていたのか、なんのためらいもなく玉手箱を開けた。
-私の痛みは私の中だけのモノだからね-
開けてみると中から話で聞いた通り白い煙が出てそれに包まれたたが、幸いそんなに日数が経過してなかったのでそんなに老けることは無かった。
「おかえり。さて行こうか」
と促したが、せっかく喋れるのだから一つ質問をしようとしたが
「……個人的な質問以外なら答えるよ」
と返されたので、何故私に扱いをしたんだろうか?ここにいた賢者達はなんとなくわからなくもないがと言ってみた所、やれやれといったアクビをした後。こちらに目を合わせ
「コレクションだよ」
と言って、私は猫又の目に吸い込まれて行った。
意識が閉じる瞬間
『この度はまたたび商のご利用ありがとうございます』
『これであの時の借りは返しましたよ』
という声が聞こえ、気がつけばホコリだらけの懐かしい我が家にいた。
すぐさま家の状況を確認した所、一月ほどこの家から離れていたらしい。
-部屋の掃除が大変だな-
と思いつつ久しぶりに日の光を浴びようと縁側に向かうと、先客が先におりこちらの気配に気がついたのか顔だけを動かし顔を確認した後、興味なさそうに温かい陽の光が当たりながら眠りについた。
一応、終わり多分どっか気が向いたら加筆します。
マタタビ商という話が出てきますが、これはTwitterで書いた話なのであちらをご参照
他の小話が書きたいのでさっさと終わらせる。




