奇想小話 『外伝』
親しい友人と美味しい飯と酒をかっ食らんで、馬鹿笑いをしながら笑顔で分かれ、電車内で自宅近くまでウトウトしながら揺られていた時、どうせ待つならこの世の外がいいと目を閉じ再び目を開けたらこの世の外に来ていた。
出迎えてくれた姿もわからぬ住人に、この駅で起こしてくれと酔った頭で頼み近くの青々と茂った原っぱで服につく汚れも気にせず横になり、雨上がりの土と空の匂いを嗅ぎながら少し眠りについた。
目的の駅近くになった時やはり姿のわからぬ住人に起こされ、まだ寝たいと思いつつも身を起こした。
フラフラとまだ酔った寝起きの頭で再三礼をいった所、住人から
「あちらの世で貴方様の存在を保証する者が誰もおりませんでしたゆえ、代わりにこの世の外の住人が貴方様の存在を保証しただけでございます」
と返され時間も時間だったので頭だけ下げ、お礼、お代の代わりとしてこの世の外の記憶を差し出した。
もしかしたら手に持っていた少々ボロボロになった傘でも良かったのかもしれないが私はこの記憶のほうがふさわしいと思い。思い出をそこに置きこの世の外から帰ってきた。
再び目を開けると、イチャイチャしたカップルとスマホに夢中になっている人達と忘れものであろう傘に囲まれた電車内で目を覚まし、ちょうど到着した目的駅で自身の傘を持って降りた。
駅周辺は真っ暗で引っ越したばかりでなれない土地のため、地図アプリで帰宅のためのルートを確認し自身の帰る道をしっかりと把握した所で役目とオマケは終わったとばかりにスマホの電池が切れた。
私は、心のなかで枠だなと思いながら、雨上がりの原っぱを横目にコンクリートの地面を歩き始めた。




