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奇想小話 『猫が猫又になるまで』

 猫は一生に一度だけ人語を喋ることができる。

 ただ、その人語を使わず20年の時を過ごすと猫又になれる

 猫が猫又になれる道の一つだ


 家によく来る猫又が他の猫又に比べて一度も言葉を介さないので、喋れないのか喋らないのか、そもそも猫又なのか日々疑問に思っていた。


ちょうどどうなんだと思っていた日、その猫又とよく一緒にいる少年が猫又と共に現れたので勝手に庭を散歩している当の本人をよそに聞いてみると


「この世の外に来るためには最低でも自身の何かを一つ捨てなければならない。僕も貴方も神もこの世界で生きるなら例外なく」


当たり前だと肯定の頷きをする。それを確認すると


「大抵のモノは名前を選ぶけど、この子は人の言葉を選んだよ」


-大切な人から貰ったモノは捨てるわけにいかないし、私が常にあの方と共に在るため、そしてそれは朽ちることなく常に持って歩けるものだから-


-そもそも人の言葉なぞ使えなくても生きてきたから別にいらない。何より今後使えなくても十分なほど使いたい相手に使えたからそれで良い-


「って此処に来る前に言っていたよ。因みに僕は名前を捨てたよ。ここから出る時は拾い直すけどね」


 と、本人聞こえるように微笑みながら言うと、当の本人はすました顔をしながら、異常なしと言わんばかりにニャーと声を上げ、いそいそと温もりを求めて今日は私の膝の上にうずくまった。


 何が在ったかは全ては察せなかったが、あの世に持っていけるのは知識と名前くらいだろうしそれもまた選択の一つか、と思いながら名も知らぬ猫又の頭を撫でながら今日を過ごした。

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