奇想小話 『海の魔女の家』-②
「私の存在を当てたということは人魚姫をご存知という事で良いですね?」
私は肯定の頷きをし、目の前のクッキーを一枚食べた。
「彼女は人になるために自身の美しい声と引き換えに人になれる薬を作って欲しいと魔女である私に頼みました」
「人にすることはできたのですが、このままだと王子となんのきっかけもなく人の姿になる」
「きっかけもなく王子に近づけるはずもない、身分を偽ってもいつかはバレるという事で王子と強い縁と魅惑を結ぶ代わりに歩く度に激痛が走るという効果と王子から愛を得られなければ泡となって消えるも付け加えました」
……なにか呪術めいてますね。
「魔女であって、神ではありませんからね。それに当時はまだ若かったですしこういった物しか作れなかったんですよ」
と少し複雑そうな顔をして紅茶に手を付け口を潤す。私はなくなった紅茶のおかわりをいただき話を促した。
「後はトントン拍子に話が進んで王子と一緒に暮らせるようになったんですが、当時王子は気になる女性が一人居ました」
同じく王子を助けた人魚と瓜二つの修道女ですね。物によっては出てこなかったりしますが──
魔女は合ってますという感じで頷いた
「ええその方です。彼女と王子は最終的に結婚されるのですが、この物語ではあまり深く語られないおかしな部分があるんですよ」
そう言えば、出てくる修道女についてはあまり考えた事がなかったな。と思い少し考えていると
「修道女と瓜二つという事があると思いますか?姫君が教養を身につける為にわざわざ他国の修道院に身を預けます?」
「簡単に隣国の王子と縁談を用意できると思いますか?」
「そして『どうしても結婚しなければならないとしたら彼女に瓜二つのお前と結婚するよ』と直接言えますか?」
「それ以外にもありますが、彼女の物語も中々面白いですよ。本人も含め彼女の物語をあまり語る方が居なかったのでほぼ消失してますが」
「人の数だけ舞台があり物語もあるということですよ」
あまり喋らないのかコホンコホンと軽く咳払いをした後、紅茶の残りで喉を潤し、二杯目を入れた。
「で、私はというと」
「私はあの後、あの三人の行く末を見守りつつ過ごしていると、彼女の姉妹が髪を対価に家族を助ける方法を用意してくれ」
「と言われたので用意したのですが、話の通りに彼女は死んでしまいます。物語は彼女が泡になって消えた後で」
「姉妹は『助ける方法を用意を用意してくれと言ったのに彼女は死んでしまった』と怒鳴り込んで来たのです」
「当時の私はそれなりに恐れられていた海の魔女でしたので追い返して居たのですが最終的に国までがお尋ね者にして」
「逃げに逃げて、今はこうして陸で海の魔女をやっている次第です」
自虐的な含み笑いをし、いつの間にか片付けられたテーブルの上にはタロットカードが並んでいる。
「塔の正位置、今回の仕事少々気をつけた方が良いかと、対処法は恋人の正位置、気になる女性が居たら助けを求めるか甘い恋の話をしてください」
「最終結果は運命の正位置、ふむ……もしかしたらあなた様も大きな舞台の上に上がることになるかもしれませんね」
とフードから見えたしわくちゃの笑顔で応援された。今ならその髪とその声に合う姿を作れるだろうにと思いつつ、海の魔女にも海の魔女なりの物語があるのだろうと、口を開いた
-ありがとうございます。そろそろ出ようかと思いますが、お代は-
「そうですね。届ける手紙の内容か新薬のお手伝いのどちらか」
私はノータイムで新薬の実験台を選び、最終的にこの店を去った。
まだ続きます
長編になりそうだぁ




