奇想小話 『祈雨娘』
ある初夏の日、小雨が降り始め徐々に強くなりつつあったので雨戸を閉めていると家によく来る猫又と白装束の少女がやってきた。
猫又は我が物顔で閉めようとしたした雨戸からするりと体を入れ、普段はしないのに雨粒を拭くように体を擦り付けた。
少女の方は戸惑いつつもなにか申し訳無さそうな顔をして頭を下げてきたので、とりあえず玄関から上がらせ少し濡れた体のためにタオルを貸した。
猫の体を拭いてやりながら、少女の方に何が遭ったのかと聞いた所
「実は元いた世界では酷い干ばつがあり、雨乞いのために生贄にされたのですが、あちらの世界に行く途中、奇跡的に自然の雨が降ってまいりまして」
「本来交わすはずだった契約が不履行になり、あちらの世界にもこの世にも行けず『この世の外』に来てしまいました」
「ここに来た際に、この猫に案内されこちらに伺ったわけでございます」
これはどうしたもんかと、頭を悩ませつつ今日は家に泊まるといいと言って
これからは世界は荒野ながらも自由の身、何がしたいか聞いてみた所
「生まれてこの方、どちら世界もあまり知らない身ですので何処でも良いので旅をしてみたいです」
「初対面ながらも大変良くして頂き本当にありがとうございます」
と三指揃えて礼儀正しくお礼を言われた。
ふむ、流石に見た目も雰囲気も年端も行かぬ少女だが、礼儀正しく一端一端の動きも丁寧で、職かなにかならば心当たりはあったが旅ときたか。
どうしたものか、なにかしてやれぬか。
と少し思考を考えつつ自身も床についた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日目を覚まし朝の支度を済ませ少女を呼びにくと、部屋に少女の姿は無く代わりに湿った布団と木彫りの人形が置いてあった。
近くに昨日帰らなかった猫又がおり飯はまだかと、こちらを見てきたので
お前の仕業か?
と聴くと、さあ知らんな?と言うようなトボけた声で「にゃー」と一言だけ言われた。
その後は一人で作りすぎた朝食を食べ終えた後、顔なじみの骨董品屋に行き彼女の事情を話しこの人形を商品として置いてもらった。
暫くたった後に彼女は旅立ち今はあるキャラバンにお守りとして大事に扱われており、素敵な旅をしているそうだ。




