奇想小話 『みの杉玉』
風が少し冷たいと感じる季節
酒が美味いとある地方で、飲み放題の祭りがあるらしく
たまには行くのも良いかと思いはるばる足を伸ばして訪ねてみた
出発の直前、馴染みの友人に
「あまり飲みすぎて宿以外で泊まるなよ」
と意味深なことを言われていたので、昔に戴いた一薬の短と呼ばれる薬を服用して現地に向かった。
どの家も大きな家でどこも酒蔵を持っているのか大きな杉玉が飾ってあった。時折人並みに大きい杉玉があり、驚きつつも祭りの会場に足を運ぶと既に人だかりで
これは服用する必要はなかったかなと思いつつお金を払い酒を入れる枡と徳利をもらった。
受け取る際、受付の美しい女性がやけに妖艶な雰囲気を醸し出していたのが気になったが酒の方が気になり、その場を後にした。
酒の方は噂通り本当に大変美味しく、この土地以外の珍しい酒も置いてあり湯水の如く飲んでいった。
その後暫くフラフラと飲み歩いていると地元の人が酒の説明や案内をやっていると聴いたので行ってみた。
そこでは、これまた美しい方が酒の説明をし時折、客に酒を注いでいた。
その様子を見て気になることができ、服用していた薬の効果も切れそうになっていたので一度宿に帰ることにした。
移動中、すれ違う女性をよく見るとどれも美しく妖艶な雰囲気を纏っていた。
じっと見ていたのが相手に悟られたのか
「どうかされましたか?」
と声をかけられた。いえここの方は美しい方が多いので目移りしただけでございます。
と正直に答え頭を下げ素直に謝罪した。顔を上げるとすぐ近くに相手の顔があり顔色を伺われていた。しばらく顔を合わせた後
「酒がお強いんですね。せっかくですし我が酒蔵で一杯やっていきませんか?」
と艶っぽい怪しい瞳で言われたので、神の配達人をしておりますので効きませんよ。と言い放つと
「傷つけるつもりは毛頭ないのですが。気分を害されたのでしたら申し訳ない」
「時折外部の血を入れないと元々の血が少々色濃く出てしまいますので」
と先程まで見えなかった蛾の触覚をぴょこぴょこさせ謝った。
ああ、なるほど。と心の中で納得し、では家の前の大きな杉玉はと聞き返すと
「ええ、春になれば綺麗な蝶が生まれますよ」
と返され、どこに隠し持っていたのか大量の酒や土産物を渡され
「くれぐれもご内密に」
と念を押された。こちらも派手にやってややこしいことにならないよう念を押し、酔っ払った独身であろう男性が介抱されどこかの家に入っていくのを尻目に宿へ向かった。
杉玉:スギの葉(穂先)を集めてボール状にした造形物。酒林とも呼ばれる[1]。日本酒の造り酒屋などの軒先に緑の杉玉を吊すことで、新酒が出来たことを知らせる役割を果たす
一薬の短:百薬の長の逆。いつか書きます。




