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奇想小話 『それは暖炉の精のひとつ』

 最近めっきり寒くなってきたなと、体を擦りながら炊事場がある土間に降りると

角が生え白い毛に覆われた羊のような生物が体躯座りをしていた。目が合うがいなや、おじさんのような少々野太い声で


「やや!私は怪しい者でございますが、決して危害を加えようとここにいるわけでは!!」


 と慌てて何か弁明し始めたので、一通り聴き終えるまでどうするか悩んでいたが話を聴くと

 はるばる遠くの外国の方がここまで旅をしてきたらしく、路銀も少なく、この見た目とこの声でどこも泊めてくれる場所がなかったらしく、不思議な気配に誘われてこの土間に隠れていたらしい。

 嘘も言っているようには見えず、正直者であると思い一晩泊めることにした。

 

 途中なんと呼べば良いか聴いた所、暫く悩み


「スラブと呼んでください」


 名前に心当たりがあったので、

なるほど、かなり遠くからようこそと返し、食事を簡単ながら作り共に食べ

寝床が必要だなと用意していたら


「いや、本来竈や暖炉が住処ですのでそこまでしていただかなくても」


 と言われたが、流石に客人を土間で寝かせるわけにはいかないなと思い。何か手は無いかと考え

 この時期、丁度いいタイミングか。と倉庫から長火鉢を取り出してスラブの寝床に置き。


 これは長火鉢と呼ばれる移動式暖炉です。と言って説得した。スラブも暫く長火鉢を観察した。これをきいたスラブは


「おお、ありがたい。ありがたい」


と 涙を流しながら喜んでくれた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 夜、長火鉢を挟みながら談笑していると。不意に家のチャイムが鳴ったのでこの時間に客か、と出ようとするとスラブが制止し


「今日はハロウィンです。良からぬものがきたのかもしれません」

「ブラウニーとは違い家事等はできませんがコレくらいは致しましょう」


 と、私の話も聞かず出ていった。

 着いていくかと思ったが、ここに訪れる者は、まあ大丈夫だろうと長火鉢で沸かした白湯を飲んでいると

 野太い声と長火鉢に誘われた猫又の威嚇する声が聞こえ始めたので慌てて玄関に行くことになった。

スラブの妖精:所謂、ドモヴォーイのこと。


ハロウィンは元々ケルト系列の祭事であり、地方が被っているスラブ民族から生まれてきたドモヴォーイが知っていても不思議ではない。

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