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奇想小話 『耳だけ芳一』

黄泉の境界で働いている友人に久しぶりに会いに行くことになり、何かこちらから持っていくものはあるかと聞いたら


「様々なジャンルの音楽を持ってきてくれ」


というのでクラッシュを始めロック、ポップスなど、さまざまなジャンルの音楽を入れた音楽機器を持ってきた。


実際に会って聞いてみると

「最近、音楽をやり始めてね」

「良い師匠になる人を探して黄泉の国を休日ウロウロしてみたら、耳なし芳一で有名なあの芳一の『耳』が師につくことになったんだ」


そりゃまた有名な師を

と話しつつ、持ってきたこれは練習用とか?

と言ったら


「うんや、違う。師に授業料について聞いたら」


『口や鼻も無いから食べ物や香も不要、目も手も無いから絵や物は不要、ただ耳はあるから音が欲しい』


「と言われてね。時折こうやって人に音楽をねだっているんだ」

と言った。


なるほどと納得し、それで腕の方は如何ほどにと音楽のお返しに一曲ねだると

黄泉の境界で『鬼神も涙を流す』とは言えない、なんとも説明しづらい音楽が鳴り響いた。

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