奇想小話『バカを漬ける薬』
ちょっとした手伝いで、ある薬液を運んでいたのだがその薬液名が
『バカを漬ける薬』
バカにつける薬(飲み薬)は商品を見たことはあったが、逆スタイルは初めて見たな。
と思いつつ、配達場所で着くと古めかしい銭湯のような工場だった。長い煙突が生えそこから煙が出ている。正面から入り受付を済ませ荷物を渡す。
いつも配達に来る方は大丈夫ですか?と聞かれたのであまり深くは語らず大丈夫です。と返した。
早々に立ち去ろうかと思ったが、やはり少し気になったのでどういった物なんですか?と聞いてみると、
「ああ、名前の通りですよ」
「世間一般的に馬鹿と呼ばれる人達にこの液を薄めた温泉に入ってもらいまして、そこから得られたエキスを凝縮して加工して馬鹿になる薬として売っているんです」
「……まあ。馬鹿というよりかは能天気だったり、あの世間に不満の欠片もない人達だったりするので決して馬鹿ではないんですけどね」
と最後にボソリと呟いた。
微妙に変な空気が流れたので、それって売れるんですか?と話題を変えてみると
「ええ、お陰様で想像以上に売れて今ではこの会社を支える一大事業ですよ。」
「ここ、『この世の外』ではあまり売れませんがそれ以外の場所ではよく売れますよ。副作用も大量に摂取しても特に影響が無いですから」
「とはいってもこちらの世ではあまり馴染みが無いと思いますが……」
と言われ確かに、といった顔をしていると
「所長、そろそろ方々達が」
事務員が割って入ってきた。二人で時計を見ると思った以上に時間が過ぎており、そろそろ出なければならない時間だったので、お互いにそれではと言って別れた。
工場から出る際、明らかにこの工場の人達ではないであろう人が仲良く談笑しながら数十人工場の中に入っていった。
すれ違いざま少し会話の内容を聴いたが決して馬鹿にするような話ではなかった。
時折
「効果が出ないのですが」
というクレームが来たりするらしい




