奇想小話『鬼のパンツ』
今日は顔なじみの骨董品屋
ではなく……庭と畑と依頼先で作業する為の服を買いに作業着屋に行ったが、良いズボンの作業着が見つから無かった。
どうしたもんかと特に何かカゴに入れるまでもなく、待ち人も居ないのに久しぶりに行く店だからと店内をウロウロしていると、使い捨て用の下着類の中に長ズボン大のパンツが売ってあった。
虎柄で少々デザインが……とは思いつつ、あまりにもパンツとしては大きかったので気になって商品を手に取ってよく見ると商品名に
『鬼のパンツ』
と書かれてあった。
値段も手頃で本当にトラの毛皮を使っているのか肌触りもそんなに悪くない、丈の調整もいらなさそうだったので物は試しとカゴに入れ、レジでどういった用途の物かと会計をしながら聞いてみた。
「ああ、これね。良いパンツだよ。力は沸いてくるし破れないし通気性も抜群だよ。私もたまに履いて仕事するよ。」
「力仕事をするなら間違いなくオススメだね」
と思った以上に評価が高く、店内を見ても他に良い物もなさそうだったので購入した。
精算後に店員が改めて
「これはパンツだからね?もう一度言うよ。パンツとして使ってね」
と念押しされ、レシートにも下着類1点と書かれてあった
◇◆◇◆◇◆◇◆
帰宅後、早速着替えて使ってみたものの、特に力は沸いてくるというわけでも通気性が格段良いわけでも無かった。
ハズレを買ってしまったか?それとも動くと違うのか?
と思いつつ一仕事しに畑に向かい、仕事をして汗だくになり畑の横で休んでいると、ふとあの時店員が言った言葉が蘇った。
『これはパンツだからね?もう一度言うよ。パンツとして使ってね』
……帰ろう
と心に決め後は速く、一度帰宅し直ぐに風呂で汗を流し、少々汗臭い鬼のパンツだけを履き風に吹かれながら一時間ほど『これはパンツである』と瞑想し初めた。
体が乾き体も心も頭も落ち着いて着たと感じたので、いざ上着を着てパンツ姿のまま外に出てみると、とたんに力が沸いてきてた。
しかし少々恥ずかしい。と思ったが背に腹は代えられないし、冷静に考えるとズボンを履いてない分洗濯物も少なく済む。
何より一枚履いてないだけで随分と通気性も良いと自身に言い聞かせ、再び畑道具を担いで夏になりつつある道を歩きながら畑に向かった。
本来の鬼のパンツは丈夫なだけなのであしからず




