1話:死と天使と説明と
リハビリ的なやつなのでっ、もう一つの作品もしばらくしたら投稿します、きっと、たぶん、いつか
不定期で、書けた時に投稿します。期待はせずにです。
ふと気が付くと見知らぬ部屋で座った覚えのない椅子に、机を挟んでこちらを見つめる初対面だと思われる女性と向かい合って座っていた。
…ふむ、余りにも唐突だったためか逆に冷静になり、記憶を思い返し理解した。
そうか、自分はどうやら死んでしまったみたいだ。
目の前に迫る大きな車体と、流れがゆるやかに感じる時間の中で、目に入ってきた運転手の寝顔。
ぐるぐると回る景色の後、頭に強い衝撃を受けると同時に意識を失った。
事故の後に助かり、なんらかの要因で失っていた記憶をたった今取り戻したという可能性も一瞬だけ考えたが、瞬時に否定した。
なんとなく、自分が今、生きていないということが分かるのだ。
自分はあの事故で死に、そしてここはすでに死後の世界なのだろう。
生前は1人で出来る趣味が好きで、よくライトノベルも読んでいたので、なんとなく展開が読める気がする。
きっとこれから説明を受け、転生する世界を決めたり、何に転生するか決めたりするのだろう。
そう考えて椅子に深く座り直し、改めて目の前に座るニコニコと笑みを浮かべた女性を見ると、話を聞く態勢が整ったと判断したのかこれから最初に選択すること、出来ることをタブレット?を出しながら説明してくれた。
何度も聞き返したり、質問をしながら聞いた情報をまとめると
消滅するか、転生するか、天使になるかを選ぶ事が出来る。
消滅はそのままで、存在している事に疲れてしまった者や罪を償うことを拒否した者が選択するらしい。
転生は罪徳が0以上の者のみが選択可能で、マイナスの者は地獄の苦しみの中で罪を償い切った場合にのみ転生することが許される。
ちなみに、転生時の特典に関して聞いてみたが、罪徳がプラスのものは多少の才能が約束されるが、記憶を引き継ぐには余程の善人であるか、神に気に入られてなければならないらしい。
自分はそれなりに善人ですね?ってレベルで、神に気に入られていたなんてこともなかったので、記憶を引き継いだ転生というのは出来ないようだ。
天使になるには少し以上に善人じゃないとダメらしい。もっと詳しい説明をしていたが割愛する。自分はそれなりに善人らしいので天使になることも可能だと言われた。
天使になれば、飲食睡眠を含め何もする必要は無く、中には一日中日向ぼっこをして過ごしている人達もいるみたいだ。
でも、娯楽品が欲しい天使は仕事をこなすことで貰える通貨的なもので購入することも可能らしい。この説明も仕事の一つなのだと教えてくれた。
細かいルールはあるものの、善く過ごしていれば基本何をするも自由とのことだ。まさに天国?天界って名前らしいけれど。
余りに自由だからそれで問題は起きないのか聞いてみたところ、天界では神様も一緒になって過ごしているらしくて、もし問題が起きてもすぐ処理されるとのこと。
ここまでを聞いた結果、消滅してしまうのは怖いし、転生も記憶を残せないのならば自分が消えてしまうようでやはり怖かったので天使になることに決めた。
そう伝えると、うんうんとうなずきながら、そうする人がほとんどだと教えてくれた。
そしてそこから天使になってからの具体的な説明が始まった。
まず、天使として仕事をやっていくにあたって、1人につき一つだけ属性を貰える。
そしてその貰える属性に関するちょっとした能力も使えるようになるみたいだ。
例えば火属性ならライター程度の火を生み出したり、操るだけならガスコンロの火くらいならば操れるようになるらしい。
ちょっとショボ過ぎないか?と思っていたらどうやらそれは貰ってすぐの話で、能力は使えば使うほど強力になっていくとのこと。
火属性持ちのベテラン天使ならば、火山の噴火すら操る事が出来るというのだから驚きだ。
属性の種類には、選ばれやすい属性が火、水、風、土、光、闇、時、空、無で、それ以外にも氷や雷、毒、石、植物、邪、浄属性などほぼ無限にあり、時には新しく増えることもあるらしい。
誰でも何でも選択できるということではなく、魂との相性と過去にどんなものに接してきたかで適性、つまり得意不得意が変わると言う。
漁師であれば水属性、農家であれば土属性、温泉が好きだった人が火属性と水属性に適性があったり、会社員なんかは意外?にも時間を気にする事が多いからか時属性が得意なことも多く、地球の現代人は機械に触れてる事が多いので雷属性が得意な人が多くなったと語っていた。
なんとなくドキドキしながら自分の適性も調べてもらうと、一般的な地球出身の会社員とほぼ変わらず、強いていうなら浄属性にそこそこの適性と、邪属性に同じくらいの不適性があると言われた。
生前は掃除好きで、加えて無駄なものはあまり持たない主義だったし、人間関係のトラブルは出来るだけ避けており、死ぬ直前までは犯罪にも関わることもなかったからだろう。
平凡であったことに少しガッカリしつつも、まぁこんなものかと受け止め、お勧めもしてもらえたので浄属性を選択した。
見せてもらっている端末の属性一覧から浄属性を選んで決定を押すと、演出も特に無しで属性が与えられた。使えるようになった能力は浄化で、文字通り汚れを綺麗にすることが出来るらしい。
どうやらこの説明をしてくれている彼女も浄属性の天使だったらしく、呆気なさに少し戸惑っていた自分を見て笑いながら、先輩として相談があればいつでも聞くと言ってくれたのがありがたかった。
ふと、同じ属性ということは、依頼を奪うライバルになるのではと聞いてみたが、膨大な数の依頼があるため選び放題なので問題はないとのこと、どれだけあるかは見てのお楽しみといたずらっぽく言っていた。
属性の決定を済ませたことで手続きは終わったようで、これから暮らす場所を実際に歩きながら、大まかに説明してくれることになった。