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01 レーナ
私はレーナ。
ただのレーナです。
家名はあったけど、失くしてしまいました。
今の私は、鎖に繋がれる存在。
なぜなら、大量の借金をしてしまった両親に売りとばされて、奴隷になってしまったからです。
重たい鎖は、首や腕、足についていて、とても動きづらい。
何をしていても、その鎖が視界に入るため、私は生きているだけで暗い気分になりました。
生きているだけ幸運、なんて言葉があるけど、とてもそうは思えない。
苦しみが長く続くよりは、一思いに楽にしてほしかったです。
明るい顏などできるはずがありません。
奴隷になってからの境遇はひどいものでしたから。
でも、優しい貴族の少年が私を買ってくださってから、全てが変わりました。
私を一人前の人間として扱ってくださって、そして普通の人間と同じように接してくれるからです。
でも、どうしてそんな親切にしてくれるのか分かりません。
ただ分かるのは、たった一つの事実。
あの方は、奴隷も普通の人間と同じだと信じて疑わないようでした。
一体どうして、そんな風に思う様になったのでしょう。