第1話 始まり
まだ設定が不安定なので加筆する可能性ありです、少しでも面白いお話を書けるよう頑張ります。よろしくお願いします。
「101回目」
細いヒールを鳴らしながらするりと伸びた長い脚が優雅に歩を進める。
「ねぇ、私もう疲れたわ。」
長く黒い艶やかな髪、全身に黒い服を纏い、黒いベールで顔を隠した女。
その姿は誰が見ても一目で魔女だと分かる。
「ふふふ、ねぇ、ほら、だって私、こんなに高揚してる。いつの時代に生まれ変わっても思い出す瞬間の恐怖、絶望、痛みが貴方にわかる?ふふふ、ねぇ?」
王座に座り微動だにしない男の前で女は歩みを止める。男の長い前髪の隙間から、赤い瞳が僅かに揺れた。
「だから、ね、私、今度は私が貴方を、殺してあげるから、ね?私殺されるのは慣れてるけど、貴方を殺すのは初めてなの、ふふふ。だから、ちょっと上手に出来ないかもしれないけれど、許してね?」
女は白く華奢な腕を男へと差し伸べ、その頬を撫でる。美しく整った男の顔が女を見上げた。
「ずっと考えてたんだけど、やっぱりまだ決めれないの。焼くのと、切るのと、潰すのと、溶かすのと、捻じるのと、落とすのと、刺すのと、ムシるのと、ちぎるのと、ねぇ、貴方はどれがいい?ふふ、私あなたに選ばせてあげるなんて、優しいわ。貴方は1度だって私に選ばせてくれなかったのに…ああ、やっぱりやめた、早く、殺さないと。こうしている間にも、私が殺されちゃうかもしれないわ、ふふ。さようなら、魔王様―――――« »」
ぐちゃ。
べしゃ。
ミシミシ。
ベチャベチャ。
血が滴る、狂った女は魔王を殺した。
そして、動かなくなったそれを膝に抱えて、真っ赤に染まった瞳で上を仰ぎみる。
「……………………………鉄臭い」
静まり返った魔王の間で、魔女は一人呟いた。
「魔王様!!!」
「こ、これは一体…」
「ま、魔女だ、魔女が……ヒィっ!!」
騒ぎ出した配下の魔物達へ魔女か視線だけを動かした。その赤く染った瞳を見て、魔物達はざわめく。
そして、1匹の魔物が頭を垂れる。
「その瞳とお姿、我らは貴方様と共に。我らが新しき、魔王様…」
続いて他の魔物達もひれ伏した。
そんな様子を女はつまらなそうに一瞥し、また何も無い虚構を見つめた。
「ふふ、これでやっと、始まるわ。やっと、始まるのよ」
ある日、100回死んだ女は、魔女となり、自分を殺す男を殺して、死の連鎖を止めました。
これは、その、101回目のお話。