初夜
「アイネス。」
後からそっと声をかけられてアイネスはゆっくり振り向いた。
式が終わり、2人はバース家のシュンの部屋に帰ってきていた。
そして、軽く夕飯を食べアイネスは月が綺麗だとバルコニーで夜風に当たっていた。
「アイネス……そろそろ中に入らないと風邪引くぞ。」
シュンはアイネスにそっとショールを掛ける。
「ん。ありがとうシュン。………ねえシュン。今日は凄い素敵な日だったね。」
「……そうだな。」
アイネスは隣に立つシュンにそっと肩を寄せる。
「凄い幸せだった。」
アイネスは今日を思い出しうっとりと月を眺める。
「違う……アイネス。幸せだったじゃない。これからもっと幸せにするから。」
シュンは優しくアイネスにキスをする。
「ん。私もシュンの隣にいて恥ずかしくないようにこれからも頑張るね。………私もシュンを……だ、だ、だ……。」
「だ?」
どもって項垂れるアイネスに不思議に思いシュンが覗き込めばアイネスは顔をまっ赤に染めている。
「だ、旦那様を幸せにしますから!」
勢いよく顔をあげて叫ぶアイネスと、覗き込んでいたシュンに頭突きしてしまう。
「ー!」
「!」
「………アイネス……お嬢様。今日、この時くらい雰囲気壊すような事はなさらない方が良いのでは。」
「………すいません。」
はぁ…とアイネスの頭上でシュンがため息をつく。
「まぁ、俺の奥様はなかなかしごきがいがあるのが魅力の一つでも有りますからね。」
イタズラっ子のようにシュンは微笑むとアイネスを抱き上げる。
「え?あ、シュン?」
「さて、まずは一ヶ月触れられなかった分から俺の奥様に幸せにしてもらいましょうかね。全く……いきなり一ヶ月いなくなったかと思えば昨日は1時間だけしか触れられないし。」
昨日、アイネスが部屋に来てくれたときはたまらなく嬉しかった。
声が聞けて、触れられて抱き締めて。
その先のお楽しみまであと少しという頃で母と義理姉が再び嵐のようにアイネスを攫っていったため生殺しも良いところだった。
おかげで今日の式の最中アイネスを見つめては煌めく美しさに頭が可笑しくなりそうだった。
よく耐えた……俺は。
思わず自分で自画自賛してしまう。
「あ、それは……ごめんなさい。」
「まぁ、それはそれでベッドでゆっくり聞かせてもらいますかね。奥様。」
優しくベッドに下ろされる。
そこで、アイネスがふっと何かを思いだす。
「あ、ねえ!シュン!ちょっ、ちょっと待って。」
組み敷いて来ようとするシュンをアイネスは押し返しベッドからおりると自分のクローゼットから掌サイズの箱を出し、再びベッドへ戻ってきてシュンの隣に座る。
「シュン!これ。」
小さな箱からアイネスは二つのリングを取り出す。
「これは?」
「あのね……。これ結婚指輪なんだって。シュンの左手頂戴。」
アイネスはシュンの左手の薬指に指輪をはめる。見れば簡単な装飾はされてこそいるがシルバー色のシンプルな男物の指輪だった。
「うん!似合う!サイズも合ってた~!で、これが私のなんだけど……。」
小さな箱の中にはもう一つ似たような装飾はされているがシュンのとは少し違い宝石も小さくつけられている。こちらは女者の指輪のようだ。
「アイネス。左手を。」
アイネスが俯いてモジモジしていると何かを察したシュンはアイネスの左手をとると優しく同じように薬指にはめてやった。
アイネスの薬指にはリングが二つ並ぶ。
「あ、ありがとう。」
パァァッと音がするようにアイネスが顔を綻ばせればシュンは同じく微笑んでしまう。
「あのね、シュンから貰った指輪はキョウナの国でも婚約指輪って言うんだって。だけど、男の人と交換し合ってつけた指輪は結婚指輪っていって夫婦の証になるんだって。それってなんか良いなって思ってシュンがつけててくれそうなの探してきたの。」
つけててくれる?
アイネスがシュンを覗き込めばシュンは微笑む。
「もちろん。ありがとうアイネス。」
ああ、それで俺につけて欲しそうにしてたのか。
シュンは愛おしげにアイネスにキスをする。
「それなら、これで更に夫婦の証明も出来たし。アイネス……」
ポフンとアイネスはベッドに押し倒され組み敷かれる。
「今日は一応初夜ですからね。優しくしますよ奥様。」
耳もとでシュンが舐めるように囁けば一瞬でアイネスは真っ赤になる。
「……優しくお願いします。旦那様。」
こうして2人の初夜は更けていった。
個々までおよみくださりありがとうございます!
第二章です。
ブックマークありがとうございます!
本当に嬉しいかぎりです!




