友人の婚約者
「アイネス、そんなに怒らないでよ。別に隠してた訳じゃ無いんだから。ただ、言うタイミングが無かっただけで……。」
「……そうね。」
「アイ……。」
夕日に煌めく海を前にしてアイネスは若干恨めしい顔をしていた。
理由は今頃になって目の前の二人が相思相愛の婚約者だったと知らされたことだった。
ーーーー話は前に遡る。グラウン家でラブラブツアーなるものの説明をシュンと二人でエレンから聞かされていた。
「二人が結ばれたら私達家族になるじゃない?だからお互いどんな人かわかり合えたら言いなーって思ってこれから海辺の別荘に皆で行こうと思って。つくのは多分夕方から夜になるけど、行くわよ。」
うふふとエレンは微笑む。
「海?これから?」
「そうよアイネスちゃん。海はいいわよ。この気候が一年中穏やかな我が国では海は泳いでもよし!見てもよし!行って良しで今流行らせようとしてて。その下見も兼ねてなんだけどね。善は急げって言うじゃない?支度はこっちでアイネスちゃんとシュンちゃんの分は手配したから身1つでいけるわよ!」
エレンがふふふとドヤ顔で微笑む。
「エレン……僕の傍で落ち着いてくれるんじゃなかったの?君は妊婦さんなのに新規事業なんて仕事して無理しない方がいいよ。というか、急すぎない?」
話の途中でカイが口を挟む。
「「妊婦!?」」
カイの言葉を聞いてシュンとアイネスは声をあげる。するとエレンはやっぱりうふふと微笑み肯く。
「そうよ。あと半年くらいしたらこの子に会えるわ。」
そう言ってゆっくり、慈しむようにお腹を撫でる。
「……そうか。驚きましたが、おめでとうございます。」
「ありがとうシュン君。」
カイはお祝いを言ってくれたシュンに嬉しそうににっこりする。
「兄さんの子供が出てきたら俺はもうバース家の予備としてお役御免ですね。これで心置きなくバース家を出れる。」
シュンがホッとしたように呟けば、呟きを聞き逃さなかったカイとエレンが不思議そうな顔をする。
「……?シュン君?バース家の予備って?君がバース家をなぜ出るの?」
カイがシュンに聞き返せば今度はシュンが眉間に眉を寄せる。
「兄さん……俺は兄さんに何か有ったときの予備として扱いだったじゃないですか。だけど、兄さんに子供ができたら兄さん何か有ったときは今度はその子が受け継げる。俺はもうお役御免じゃないですか?」
シュンの言葉を聞いたカイはしばらく絶句していた。そんなカイの様子を見てシュンはますます眉間にしわを寄せる。
「シュン君!!!」
突如カイはハッと我に返りシュンの肩を力強く掴むと物凄い勢いで揺さぶった。
「シュン君!君は僕の予備なんかじゃないよ!!何言ってるの!?そんな淋しいこと言わないの!君は、君はちゃんとバース家の跡取りなんだよ!!!」
「な、兄、さん、まず、はな……」
揺さぶられながらシュンはカイから離れようとするがカイがそれを許さない。
「シュン君!僕らはバース家を二分割した跡取りなんだよ!あんなに大きい家僕一人でどうこう出来るわけ無いじゃないか!だから君も立派な跡取りなんだよ!だから国家プロジェクトも君が担当してただろ!たまたま彼女が邪魔をして君をはずさざる得なくなってしまっただけで本当は君の新規事業だったんだよ!」
「兄さん!ちょっと離して!」
やっとカイから離れたシュンが叫ぶ。するとカイはシュンにしがみつき
「絶対跡取り放棄させないからね!バース家から出るなんて許しません!」
と凄んでくる。後半はもはや僕を一人にしないでと半泣きだったカイをエレンが押さえた。
「カイ。そこまでにしないと私旅にでますよ。それからシュンちゃん。カイの話は本当よ。貴方は予備なんかじゃないわ。私達が結婚したときには既にバース家半分の跡継ぎは貴方で決定していたもの。だから貴方はキチンと教育されてきたでしょう。ただ、レオちゃんにまで分割しなかったからレオちゃんはナナちゃんと婚約したのよ。」
そこで、今度はアイネスが反応する。
レオちゃんとナナちゃん?婚約?
「え?エレンさん……レオちゃんとナナちゃんって……」
「あら、アイネスちゃんは知っていたんじゃないの?貴方いつもレオちゃんとナナちゃんと遊んでいたって二人から聞いてるわよ?学校一緒だし……。」
アイネスは絶句した。
まさか、まさか……
気付かなかった。
あの二人が婚約者だったなんて……。
そして冒頭に戻る。
移動中の車内ではアイネスはナナとレオに婚約者だって気付かなかったと恨めしそうに話していたのだ。
しかし、アイネスもナナの婚約者が誰かを今まで聞いてもいなかった。もちろんレオにも婚約者の話など聞いたことがなかった。聞こうとも思わなかったから……。
それほどまでアイネスは色恋沙汰の話題に触れてこなかったのだ。
私、女として干からびていたのかしら……。
アイネスはため息をつきレオとナナに向かい合う。
「別に二人を怒ってなんてないわよ。ただ、ちょっと知らなくてショックは受けたけど……。私も聞かなかったのが悪いんだし……。ショックだったけど……。」
肩を下ろすアイネスにナナが俯く。
「アイ……ごめんなさいね。私もレオが養子だったとはわかっていたのですが、まさかバース家とつながってて、ましてやシュンさんの婚約者がアイだって知らなくって……。」
「いいの。ナナ。私も知らなかったから。今度は出来るだけ聞くようにするね。色々教えてね。」
そう言って微笑めば
「アイ……。今度からもっと色々お話しますわ。だからこれからもずっと私と仲良くしてください。」
ナナも微笑みアイネスと抱き合う。
「じゃあ、これにて一件落着?」
レオがおどければアイネスは苦笑いしながらレオには今度お昼おごってもらうからね!と言ってきた。
「はいはい。仰せのままに。」
レオも苦笑いしている。
「さぁ!それじゃあ皆打ち解けた事だし今回はラブラブツアーだから皆の部屋割りをするわね。」
話が落ち着いて来たところでエレンが張り切って部屋割りを発表する。
それぞれのペアごとで同じ部屋を3部屋割り振られた内容であった。
「ねぇ、エレン。一応抵抗してみるけど、婚前の男女を同じ部屋にするのって如何なものなの?」
カイはエレンの部屋割りをみて抵抗する。
「もう!カイは古いわ。同じ部屋はシュンちゃんもレオちゃんも嫌?」
エレンが二人にふれば二人は声を揃える。
「「問題ない。」」
そんな二人をみてカイはため息をつく。
「愚弟達の意見は別として、アイネスちゃんとナナちゃんは大丈夫?」
カイがアイネスとナナに意見を求めればナナもアイネスも顔を見合わせて答える。
「私は、ナナとがいいなぁ。」
「あらアイ。奇遇ですわ。私もアイとがいいと思ってましたの。」
「……。ねえエレン……二人はこう言ってるよ?」
「あら、じゃあ私もカイと同じ部屋にはならないわよ。」
なんなら今すぐ旅に出るわよと無言の圧をエレンはカイに向ければカイは瞬時にアイネスとナナに向かって言い放つ。
「ごめんね!アイネスちゃん!ナナちゃん!エレンの意見で決定で!」
こうして部屋割りは強制的に決まったのだった。
「さあ!部屋割りも決まった事だしご飯にしましょう。手配は済んでるのよ。そして明日は色々するからね!」
エレンは満面の笑みを浮かべていた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ナナとレオの関係が、やっとかけました!




