学友
教室に入ると私は目当ての人物を探し、近づいた。
「おはようございます。ナナ。」
「おはようございます。アイ。」
一応お嬢様と呼ばれているため令嬢として落ち着いた挨拶をすれば、ふわりと優しく挨拶が返ってくる。
この学友はナナ・オーリン・ハート。この国で屈指の財閥のお嬢様である。
彼女は腰まである緩く巻かれた金色の髪をわずかにゆらし、夕日のような薄いオレンジ色の瞳を細め微笑んでいる。その姿はまさに御伽噺に出てくるお姫様のようだ。
入学式以来、意気投合してからはこの学園でとても仲良くさせて貰っている。そのため、ナナは私を愛称で呼んでくれている。
ナナに婚約者の事、結婚の事、家での出来事全てはなした。そして、どうやって婚約も結婚も破棄しょうかと思っているとも。
おおかた話し終えるタイミングで授業開始のベルがなったため私達はまたねと声をかけて席についた。
この学校ではだいたいが卒業後各々の家業をつぐ。それに伴い結婚もする。親が選ぶなりしている場合もあるが、最近では自身で恋愛し相手を選んでいる傾向がみられる。
もちろんナナも卒業後は親が決めた婚約者との結婚が待っている。ただし、その婚約者の事をナナはとても慕っている。そして、婚約者もナナをとても愛して大事にしてくれているらしい。つまりは相思相愛なのだ。
ーーーー正直羨ましいわ。
私もそんな婚約者とであれば素直に喜べたのに。会ってても記憶に残らないような人と一緒になることが幸せだとはどうしても思えないわ。
授業の内容はやっぱり頭の中へ入っていくとなくただ、時間だけが過ぎていった。
ーーーーお昼休み、私達は学食を戴きながら朝の話について話し合うことにした。
「一応聞いておくけど、ナナは私の婚約者なんてしらないわよね?」
ナナは残念ながらと肩をすぼめる。
………当然ですよね。
わかってはいたものの、いざ聞いてみてわからないと言われると肩を落とすものだ。
「アイ。確かに貴方の婚約者様はわかりかねますが、お相手に出てきて頂くのはいかがでしょう?」
ーーーー出てきてもらう?
「いくらお相手様でも結婚前にアイに恋人が出来たり、恋仲のお噂が立てばお相手様は黙ってはおりませんでしょう?」
そもそも出てこなければ出てこなければで恋仲の殿方とご結婚されれば良いのではないでしょうか?
なるほど。
だけど、恋などそんな簡単にできるのかしら?いや、それどころかそんな事をしたら両親の怒りも出してしまうのでは?
「そうですね。ご両親もお怒りになられるかもですわ。この作戦はやっぱり適しませんね。それに恋は無理矢理するのではないですものね。恋は落ちるものですものね。」
両親の怒りを引き出すのは出来れば御免被りたいわ、と私が考えていたらナナはうっとりした表情を浮かべ始めた。きっと婚約者様を考えているのでしょう。
「ねえ。ナナは両親がお決めになった婚約者と結婚は嫌ではなかったの?」
と、聞けば困った顔をして教えてくれた。
「私はずっとあの方をお慕いしていたので……。」
ーーーーそうだったのね。
ナナをもってしてでも良い作戦が思いつかない。これは、行き詰まりだわ。
思わず盛大にため息をついてしまう。
ロンがいたらはしたないって怒られてしまうかしら。そんな風に思ってしまえばうっすらと笑ってしまう。
「アイネスは溜息つくなんて、どれ程たべたの?」
突如振ってきた声を振り返れば底にはブルーの髪色をもち、それはそれは端正麗しい男性がこちらを覗く。焦茶色の瞳に見つめられればきっとどの女の子でもときめくのだろう。私達以外は……。
彼は学内一のプレイボーイとささやかれ、やはりこの国屈指の財閥の御曹司レオ・ロック・ルーラである。
自由奔放な性格を持ち私より少し高い身長で、整った甘いマスクに囁く甘い言葉で既に先輩・後輩そして同学年の方々まで虜にしている。噂ではファンクラブまであるらしい。そんなレオも私の学友の一人である。たまたまクラスも一緒で、たまたまレオが私の席の隣だった時教科書を貸したのがきっかけで仲良くなった。と言うか一方的に砂糖を吐いてきたので私が軽くあしらった為、そんなことする女の子は初めてだと興味をもったらしい。もちろんそのあとナナにも同じように素っ気なくされいつの間にか私達は3人でよくご一緒することが多くなった。今ではそれなりに何でも言える仲ではある。
「レオ………それは乙女に失礼よ。」
素っ気なく答えれば
「そうだったね。でも、美しく可愛らしい君を満たして溜息をつかせるこの料理達にすら嫉妬してしまって意地悪になってしまった愚かな僕を許して。」
と、砂糖まみれになりそうな程甘い台詞を吐きながら隣に座ってくる。もちろん砂糖漬けされた甘いマスクの甘い笑顔を忘れずにつけてくる辺り学内一プレイボーイは流石である。レオの外面はこんな甘々でも意外に文武両道で全てにおいて完璧である。このギャップがもてるのかしら?
所で、レオ。貴方のファンクラブに私達が妬まれるのはごめんだわ。あちらのテーブルに行かれたらいかが?と私が更に素っ気なく言えば
「大丈夫。僕を思ってみつめてくれる女神達は寛大なお心の持ち主で、僕が美しい小鳥と戯れてもやっかみなどと言う悪魔に支配されたりはしないよ。」
と、少し大きな声で周りを見ながら砂糖を吐く。これは要するに周りにここで食べるからやっかむなかれと言っているのね。言葉選びがいちいち砂糖だわ。こんな言葉ロンが聞いたら本当に吐いてしまうのではないかしらと考えると少し笑えてくる。ああ、でもロンもこの位言っていたらきっと誰かのお婿さんに貰われていたわね。そしたらそれはそれで、朝ご飯を一緒に食べたり通学散歩が出来なくなるのは困るわ。家庭教師としては優しい方が良いけれど。
「所で、可愛らしい君が溜息をついたのは本当に食べ過ぎかい?それとも麗しい君を捉えて離さない羨ましすぎる悩みかい?」
「………レオ。お願いだから砂糖はこれ以上出さないでくださる。私達はもうお腹がいっぱいなのよ。」
珍しくナナが、大きく私の言葉にうなずいている。私達の抗議にレオははいはいと笑って答え改めて聞いてきた。
「で、何悩んでるの?」
ここまで呼んでくださりありがとうございます。
まだまだゆるゆる不定期更新予定で続きます。
6月25日レオについて一部変更しました。




