通学
ーーーーあの夢。何だったのかしら。
わかりそうで、わかんないー。
広いモフモフしたベッド上で大きなあくびをした後、うーんと背伸びしてみれば
「昨日これ以上、はしたなくなるなと言われたばかりなのをもうお忘れですか。」と声がする。
「これは朝シャッキリ目覚める儀式なのよ。それよりこんなに若い乙女の寝起き姿を見るなんてどうなの?」
実はシャッキリはしていない目をこすりながらロンを睨んで見れば
「私が起こさなければ誰もお嬢様を起こせないほど寝汚いのが残念です。私だってこんな酷い顔して起きる乙女は朝から見て気分が良いわけではないですよ。これ以上私の手間を増やさないようにとっとと着替えてください。遅刻しますよ。」
と余裕の笑みで返してくる。
この執事………そろそろクビをお願いしてみようかしら。なぜいつも一言も二言も多いのかしら!なんて思いながら、反面で昨日の事で見捨てられてはいないようだと少し安堵してもいた。
ロンを部屋からいったん追い出した後私はワンピースに着替え朝食をとるべくダイニングへと向かう。
朝食はお父様とお母様はいつも忙しく、一緒にはとれないので一人だと淋しいからロンにお願いして一緒に食べてもらっている。
相手が小言のロンでも一緒に食べてくれるのは嬉しい。ロンはどう思ってるのかはわからないけど………
朝食を採り終えると私達は学校へ向かう。
ーーーーもちろん徒歩で。
学校は大人の足で歩いて3、40分程度の所にある。私が行く学校は車で通学される方がほとんどである。もちろん私も車での通学を強く進められてはいるのだが、個人的にゆっくりと散歩しながら行くのが好きなので主に徒歩で通っている。ただし、やはり防犯上色々制限はかけられてはいるけど。
その1、徒歩で行くときは護衛をつけること。
その2、雨風雪、暗いときは必ず車を使うこと。
その3、ルールを破った時は今後徒歩は許可しない。
これが、主にグラウン家での取り決めであった。
そして、この護衛がこれまたロンである。文武両道出来る男、暴言とも取れる私に対する態度が無ければきっと今頃はどこかのお家に婿入りしていたのではと思う。
顔は良いのに。何でモテなのかしら?やっぱり性格?あ、出会いがないのかしら?
ん?眉間に皺が寄ってきてるわ。あら、怒ってるのかしら?と無粋な考えを巡らせていると
「私の顔を変な考えを持って見ないでくださいませんか?」
?!……ばれてた。流石ロン。
「み、見てないわよ。そんなの自惚れよ!」
一応反論しては見るも鼻で笑われて相手にされなかった。
そこで、ふっとあることに気づく。
「ねえ、ロン。貴方いつもどうやって私を起こしているの?」
徒歩通学が出来るくらいの余裕を持てるよう起こしてもらえている。それまでの私は確かに自分で起きることが出来ず、起こしに来てくれた使用人さんはかなり手こずっていたらしい。
自分で振り返ると残念なお嬢様ぶりも甚だしいわね。
でもロンが来てからは寝坊したことがない。
かなり寝起きはボーッとすることがあれど遅刻することなくこうして散歩と称した徒歩通学が出来ている。
「簡単ですよ。お嬢様の顔に濡れたタオルを被せれば息が出来なくて勝手におきます。もちろんタオルはお嬢様が起ききる前にはずしますよ?」
と、ドヤ顔で答えてきた。
ーーーーおい!
いや、そこ、ドヤ顔じゃないでしょ!
そんなに堂々と言える事でもないわ!
だから私寝起きがボーッとするのね!!って言うか、そんなことしてたの!?
ーーーー起こしてもらっているのだからとはおもうけど、突っ込み所が満載すぎてただ口をパクパクするしかできない。やっぱり性格が問題なんだわ。と納得しているうちに学校へついた。
いつもなら私が学校に入ってしまえばロンはそのまま踵を返し屋敷に帰っていくのだが、今日はこちらに近づき絶対屋敷でのような醜態をさらす真似だけは控えてくださいと念押ししてきた。
一応わかりましたと返事するが、そうそう破談を諦める訳もなく。学校にて学友と作戦会議したのち決行していくつもりである。
そう、学校にはきっと私の力になってくれるであろう頼もしい学友がいるのだから。
私はクラスへと急いだ。ついつい良い作戦が思い浮かぶのではないかと頬が緩んでしまうのに気づかずに。
ーーーーニンマリしながら足早に去って行くお嬢様にロンがやれやれとこめかみを押さえていたのを見ることもなく。
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車があるので時代設定としてはパラレルですが、平成初期くらいの感覚です。