有事シャツと私
最悪だった……。最初は一ヶ月もしないで帰れる段取りをつけて事を進めていたのに……。あのクソ狸め!俺にはアイネスがいると言っているのにグイグイと自分の娘を押しつけてくる。
胸クソ悪い。それを断れば事業の邪魔をしてくる。そして厄介なのは娘も娘で乗り気なこと。鬱陶しいことこの上ない。
これが、仕事と関わり無ければばっさり切り捨てられたのに。
イライラする。
こんな時アイネスがそばにいればまだ穏やかに過ごせるのに……。
柔らかな栗色の髪に触れて、愛らしい瞳に見つめられ名前を呼んでもらえたら……。あの唇の感触が、塞げば可愛くなく声、柔らかな肌。
「………帰る。」
居てもたっても居られなくなりその日の仕事を驚くべきスピードで片付けた。車を走らせ続ければ二日程でつく。往復を考えても4日くらい空けても大丈夫だろう。それに今は丁度たまたま運よくカイ兄さんもいる。兄さんがいればいいだろう。俺は補佐だ。
そう考え故郷というより、アイネスのもとへ戻るべく旅支度を調え机に書き置きを残し車を走らせた。
シュンが逃亡した後、書き置きをカイが見つけて絶叫していたのはまた別の話………。
アイネスの元にたどり着いたのは既に深夜を回っていた頃。少しでも会いたくて寝ているだろう、うら若き乙女の部屋へ無断で入ることを戸惑いもせずシュンはアイネスの部屋へ入っていく。
そこで、アイネスの寝姿をみてシュンは固まってしまった。
アイネスの寝相は良くない。
それはほぼ毎日みていたから解る。
だけど、今日は一段と酷かった。酷いと言うより今日のアイネスはまるでシュンが帰って来るのが解ってて誘っているとしか言いようがなかった。
「~~~~~~っ!!!なんで……。」
そこにはシュンの有事用のシャツだけを羽織った状態で寝ているアイネスがいた。下は何も着ていないので太股はあらわになり男物の服は華奢なアイネスには当然ブカブカで、胸元がぱっかり開いている。ギリギリのところで肝心なところはみえないだけでほぼ、はだけているにもかかわらずなぜか布団は床に落ちているためかけられていない。
ギリシとベッドに乗り込み起こすつもりでアイネスに深く口づける。
急に酸素を吸うことを遮断された唇から漏れた声で自分の名前を呼んで欲しくて。
それなのにアイネスから漏れた言葉が
「っふ、ん……クレ、ン…?」
ビシビシッ
シュンの中で衝撃がおきて動きが止まってしまった。
は?
いまなんて?
今他の男の名前を呼ばなかったか?
ロンと間違えるならまだ許せる
シュンなら大正解。
だけど………クレン?
俺のシャツを着て寝てるくせに……良い度胸だ。
その口を罰するようにさらに深く激しく、口内を攻める。
寝ていた所での口づけでほぼ抵抗してこないアイネスを良いことに着ているシャツ全てのボタンをはずす。
ギリギリで肌を守っていたシャツの役割は全くなくなってしまった。
「ふっ………ん…は………っ、やっ………。」
苦しくて苦しくてやっとアイネスが目を開けるとそこで息を吸うのが許された。
「はぁっ…はぁっ……はぁっ……っ。シュ……ン?」
え?何でここにシュン?思わずがばりと起き上がる
「え?え?シュン??何でここに?え?あれ?夢?え?きゃあ!なんで私はだけてるの!!?」
あぁ、今日は余りにも淋しくてシュンのシャツをきて寝てしまったからこんな夢を見るのね。恥ずかしい……。
というか、夢でもシャツを着なくては。
もそもそとシャツを着こみボタンを絞めようとすればその手はそっと掴まれて止められる。
「……アイネス。俺の服は着なくても俺はここにいるから別にいいだろう?。それよりクレンってだれ?」
抱き締められれば心地よい。
「フフフ。シュンに会いたかったからっていっても声までリアルな夢ね。それに過激な夢だわ。」
起きたと思ったら夢だと言い出すアイネスに夢じゃないと教えようと抱き締めている腕に力を込めれば
「フフフ。でも夢なら本音をゆってもかまわないかな?シュンに会いたかった。シュンが好き。」
夢だと疑わないアイネスはシュンの胴体に腕を伸ばしみずからも抱きつく。
夢なのだから服のはだけは気にしなくてもいっか……。
起きたらきっとちゃんと着てるはずだし。
落ち着く。いっそのこと夢じゃなければ良いのに……。
「シュン。早く帰ってきて……。クレンに気持ちが揺らいじゃうよ?」
クスクスと笑って普段なら絶対しないのに夢だからとそのままシュンに口づけする。
本当にリアルな夢だわと思っていたのに……
「俺も愛してるよアイネス。で、クレンってだれ?いい加減寝ぼけてないで起きたらどうです?」
急にがしりと掴まれた腕の力に驚く。
んー?
「これ、夢じゃないから。俺はさっきここに帰ってきたんだよアイネス。」
へ?
ただいまアイネスと口づけられる。
んん?帰ってきた?え?
あれ?え?
イマイチ実感がわかないアイネスをよそにシュンは囁く。
まだ夢だと思うならキス以上の事をしてキチンと覚ましてあげますよ、と。
「だって俺のこと好きになってくれたんでしょ。アイネス。」
それと同時にまた息も吸えない程の激しいキスがアイネスに降り注ぐ。そして再び有事シャツはするりと脱がされた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
今日は連投頑張り中。




