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シュンSIDE 2

 結局、アイネスは部屋を飛び出してから婚約者について聞き回っていた。それで思い出してくれる訳がなく、アイネスの奇行はすぐに奥様に伝わり俺は奥様に呼び出された。


「シュンさん……。あの子はいったい何をしてるの?」


 何をしてるのかは俺じゃ無く本人に聞いて欲しい。何をしてるのか、俺も正直わからない。


「すいません。止められなくて。アイネスは暴走してるのかと思います。」


 ああ!と溜息をついて頭を抱える奥様に若干の同情を覚える。アイネス時々暴走するんだよな。

 さて、どう止めるかな?

 とりあえず嘆く奥様をなだめてアイネスをさがさないと。


 結局見つけ出したあとも奥様をなだめながら一緒になぜかお説教を聞くはめになった。


 2時間後アイネスが解放されてからも奥様を、宥めて部屋を出れば廊下でまだなにか企てようとしているアイネスを見つけた。



 ーーーーコイツ。懲りてない…。


「時にお嬢様。婚約者様をお忘れになった挙げ句の果てに結婚なんて嫌だと拒否なさるのは、流石にお相手の方に失礼な事だとは思いませんか?お嬢様はお相手の立場になってお考えはしないのですか?」


 たまには俺の気にもなってくれ。そう思って言ったのだが


「私は……。私が……例え相手に悪くても、恋をしてからじゃなきゃ……いや、だわ。」


 めまいがする。


 ため息をつくとアイネスとわずかに目があう。


 身長差のためか上目遣いで潤んだ茶色の瞳が、誘っているようにみえる。


 本当に押し倒してみようか。


 そんな事を考えていたらアイネスが戸惑っていた。これ以上ここにいたら本当に押し倒してしまいそうだったので今は離れることにした。

 とにかくこれ以上の失態はお控えください、とだけ言うと軽い礼とともに退室した。



 ーーーー本当に攻め方を変えなければいけないな。






 翌日、気を落ち着けてアイネスを起こしにいくのは日課の一つ。

 一度寝てしまうと中々起きないアイネスを起こすのは意外に大変だった。だけど、以前アイネスがキスをしてくれたらちゃんと起きると約束してくれたことがあり、これは覚えてくれているのか気になって成人した頃にためしにしてみた。

 するとちゃんと目を覚ましてくれたから驚いたと同時に期待もした。

 

 もしかしたら思い出してくれたのではと。


 けれど、思い出されたことは一度もない。ただ、次の日も試してみたら起きたのでこの約束だけは無意識のもとで守られているのかもしれない。

 寝こみを襲っているので複雑な気持だけど、これだけ待たされているのだから少しだけ。今このときだけは許して欲しいと願ってしまう。

 そんな事を気にすること無く背伸びしてるのアイネスに苦笑いとともに小言はこぼれる。


「昨日これ以上、はしたなくなるなと言われたばかりなのをもうお忘れですか。」


「これは朝シャッキリ目覚める儀式なのよ。それよりこんなに若い乙女の寝起き姿を見るなんてどうなの?」


 自分で起きれないくせに。アイネスの寝起きなんてもう何年もみてきた、今更だ。


 アイネスをキスで起こすのは俺の仕事。

 そう思えば自然に笑みがこぼれる。


 アイネスの可愛いお願いで毎朝一緒に食事をとる約束をはたしてから、支度を促すと散歩がてらの通学の送迎がある。

 正直なぜ徒歩で行くのか理解に苦しむが、アイネスとの時間なので出来るだけ大切にしたい。


 だけど、今日はよくわからないけどジロジロ見られるからきになる。しかも、なにか変な事を考えてる顔つきなのがまた気になる。 



「私の顔を変な考えを持って見ないでくださいませんか?」

「み、見てないわよ。そんなの自惚れよ!」

 

 可愛いなぁ。


「ねえ、ロン。貴方いつもどうやって私を起こしているの?」


 唐突に聞かれたので驚いたがキスしてるとはいえず


「簡単ですよ。お嬢様の顔に濡れたタオルを被せれば息が出来なくて勝手におきます。もちろんタオルはお嬢様が起ききる前にはずしますよ?」


 …どうやら簡単にごまかされてくれた。単純だな。


 学校につくと、はしたないことはしないように言っておいたけれどニンマリしながら足早に去って行くお嬢様にやれやれと頭が痛くなり思わずこめかみを押さえてしまった。


 俺は彼女にまだ振りまわされるんだろうな。





ここまでお読みくださりありがとうございます。

しばらくシュンSIDE続きます。




ゆるゆる不定期更新予定です。

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