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ひらめき

 「部屋に帰ってきたものの…」

 さて、どうやってこの状況を覆していこうかしら。

 とりあえずベッドにポフンと倒れ込んでため息をついてみる。そこから先、何をしたら良いのかさっぱり思いつかない。



 だってそうでしょう?

 いきなり婚約者だ、結婚だって言われても私はまだ19才。まだ、どこか他人ごとの様に思えてしまう。


 お父様に呼び出されたのはつい先程の事なのに、夢を見ていた様な気分………


 いや、夢だったんじゃないかな?

 そっと目を閉じてみる。これはきっと変な夢…夢だから………目を開けたら全ては元どおり。

 何もなかった事に………………





 「婚約が決まって嬉しいのがわかりますが、些かその格好は頂けませんね。はしたない。」



 ………目が覚めたら何もなかった事に………



 「聞いてますかお嬢様。脳なしだけじゃなくて、耳なしなんてどこまでも迷惑なかたですね。そんなに大の字で寝転んでるとパンツ見えますよ。公害になり得ますし、見えたとき不愉快なのでやめてください。」



 !!!

 なかった事にっ!!!


 声にならない叫びとともにベッドから飛び起きた。何もなかった事にはならないだけじゃなく、こいつにパンツ見られるなんて。



 「ーーーー最低!!」

 「いや、お嬢様の方が最低かと。あ、誤解されると大変不愉快極まりないので言っておきますが、お嬢様の公害は見てませんので悪しからず。」

 私は見えますよと言っただけですと、飄々としている悪の執事を私は睨みつけた。


 「ーーーー最低。」

 コイツ……私を公害呼ばわりするなんて。いったい私はなんなのよ!

 いつか、いつか絶対ギャフンといわせて見せる!!




 「それはさておき。お嬢様、婚約期間が2年しかないので少しはお相手様に相応しいよう、迷惑にならないようその貧相な脳みそを鍛えねばなりませんね。」

 ビシバシしごきますよと今後の教育スケジュールを淡々と説明しだした。


 「ちょっ!ちょっとまってくださいロン!私はこの婚約も、結婚も全く知らなかったし、本当に結婚するつもりもないんです。だいたい、こんなのってないわ!その婚約者だって婚約者よ!何にも私に接点もなくてよく結婚だなんて言えるわよね!頭可笑しいんじゃなくて?私は、私は!これから好きな方を作ってその方と結婚します!ええ、2年以内に結婚します!しますとも!私は私で相手を選ぶつもりです!」


 婚約やら結婚のことをロンに拒否してもどうしようもない事はわかってる。ここでわめいても婚約解消にはならないし。でも、どうすれば良いのかもわかんないし。目をつぶっても夢じゃなかったし。

 あぁ、泣けてきた。泣くのはあんまり好きじゃないのに………


 自然と顔が俯き、目からあふれてきた大粒の涙で視界が歪んでいく。

 人前で泣くなんてはしたないって言われ……



 「本当に思い出せないんですか?お嬢様?」


 ロンの言葉に俯いてた顔をあげる。

 

 黒い引きこまれる様な瞳が、今さらに黒くなった様に見えた瞬間、


 「頭が悪いことをアピールした冗談かと思ってましたが、本当に思い出せないんですか?私の記憶では以前何度かお会いしていると思います。私は覚えていますので、多分問題はお嬢様ではないでしょうか?それか、お嬢様は相当な脳なしでいらっしゃるのか?もしだったら1度お医者様にかかってみますか?」

 ただの能なし脳なしじゃなく、極めた究極のバカだった嘆かわしいと盛大なため息をついて私を暴言で蹴散らした。


 うう、そこまで言うの?というか今なんて……?


 ん??ロンも会ったことが……ある?



 本当に私は会ったこともあるし、知っているの?本当に?



 ーーーーそれならばいったい誰なの?すぐにわかりそうなのに、どうしてわからないの?

 本当に私は頭が可笑しいんじゃないのかしら?



 ロンがすさまじく私を馬鹿にして蹴散らした事など忘れて、私は衝撃をうけた。


 誰?誰なの?


 

 気づいたらロンに詰め寄っていたが、先程のお父様の部屋で行われたやり取りが繰り返されただけで結局「能なし脳なしお嬢様はお勉強で鍛えていくしか有りませんね。」のロンの一言と、どす黒く、有無を言わさぬ笑顔で強制的に話題は終了し机に座ることになった。



 ロンのスパルタともいえる家庭教師ぶりも、普段なら憤慨するような嫌みも、大量の教科書による文字の羅列も今の私には何も入ってこなかった。

 頭にあるのは謎の婚約者を探し出すことのみ。





 「……今日はここまでにしましょう。全く浮かれ過ぎですかね?全然身が入ってない。」

 ロンはため息を盛大にはいた。



 「ロン……本当に婚約のことを教えてもらえないかしら?というか、なぜ4年しかここに勤めてないあなたでもわかるの?」

 ダメ元でスパルタ授業中に考えた事を口にだして聞いてみた。


 「………今の今まで勉強に身が入らなかったのはそんな事を考えていたからですか?」


 「………」


 「………はぁ。……お嬢様、世の中には仕事を途中から参入してきた者のために「引き継ぎ」なるものがあるのはご存じですか?お嬢様の過去も知らなければ交友関係など把握できないとお考えになられたことは?日頃からただのうのうと暮らしているだけなのですか?このバカが。」


 「……はい。聞いた私がバカでした。」


 ため息混じりで答えたロンの顔が汚いものを見るような顔になってる……。

 こ、こわい。

 

 確かに、考えればロンだって誰から聞いているのだろう。私の身の回りの世話をするには交友関係なども知る必要もある。

 うん、納得。



 ーーーーと言うことは、私も誰かから聞けばいいのでは?ロンだってお父様からだけで引き継ぎしたわけじゃないはず。

 お父様やロン以外にもこの屋敷には人がいる。貧富の差が多少はあるこの国で我が家は富の部分に入る。そのため屋敷もそこそこの広さを誇り、ありがたいことにコックさんや使用人さんも雇うことができている。


 そうだ!私のお世話をしてくださる方々はまだいらっしゃる!!

 片っ端から聞いてまわればいい。食えない人間だけを相手に聞き出そうとしなくても、誰かしら答えてくれるはず。




 「お嬢様?」



 フフフフ。

 「見てなさいよロン!私は気づいてしまったのよ。婚約者の正体を暴いたも同然よ!そして結婚破棄してみせるわ!」




 私はガバッと椅子から立ち上がり勢いよく部屋を飛び出した。

 有言実行!思い立ったら吉日よ!





ーーーー部屋に残されたロンが頭を抱えて盛大なため息を繰り返していたことなど知らずに、私はひたすら屋敷の人間を探し始めた。




ここまで読んでくださりありがとうございます。まだまだ続きます。

不定期更新予定です。


評価頂けたら喜びます!ぜひお願いします。

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