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婚約者の存在

「アイネス、お前と婚約者殿の結婚の日程が決まったぞ。」



 ――――お父様からの突然の呼び出しがあり、何かと思えば……


 アイネスの栗色の可愛らしい瞳には動揺の色が隠せない。


 アイネスことアイネス・ローネ・グラウン。グラウン家の一人娘で、今年19才の学生。

 もう成人しているとはいえすんなり受け入れるには厳しい話だ。


 


 婚約者がいるというのは「お前には婚約者がいるんだよー」的なノリで小さいに頃何度か聞いたことはあった。

 でも小さい時に聞いただけで、今まで会ったこともない正体不明な人といきなり結婚だなんて。


 ………勘弁してください。19年間恋もしたことのない私に、いきなり人生の死刑宣告ですか?


 いや、待てよ。これはもしかしたら超絶イケメンで会ってみたら超タイプだったりして。

 こんな時なのに何故かプラス思考に傾いてきている私は若さなのか、おばかなのか。



 いやいやいや!と自分の考えを否定するために頭をブンブンとふれば瞳と同じ栗色ポニーテールもブンブンと振りまわる。



「それは大変おめでたいお話ですね。では、まだまだ未熟で稚拙で、手に負えないお嬢様を完璧な婦人となるよう全力でしごきあげないといけませんね。しかし、このようなお嬢様を受け入れてくださるとはなんと寛大な心の方でしょう。」


 腹立たしい内容をスラスラと言い放った声に振り向けば、特別おめでたいとも感じていない表情をして立つ男がいた。


 そう、この失礼な人物はアイネスに4年前から使えているロン・バスタ・シュンという執事だ。


 背が高く、スラリとして引き締まった体格で、漆黒に輝く髪、切れ長で見つめられると引き込まれるような黒の瞳を持つ。さらに黒いスーツを着こなしている姿は誰もがうっとりとする見目の好青年である。

 


 そんなロンは雇い主であるグラウン家当主を前にしても、一人娘であるお嬢様に対する態度は変えない。


 というか、可愛い一人娘がけなされているのに怒らないお父様もどうかと思うけれどとこっそりアイネスはため息をつく。


 いくらお父様が優しくても賃金が発生している主従関係が有る以上コンプアライアンス的に問題はあるだろう。



 ―――――――雇われの身で有るならば少しは雇い主の前位、態度を改めても良いのではないかと思う今日この頃である。



「あら、ロン。あなた私が羨ましくてすねてるの?何たって毒舌、性格悪過ぎて28才まで彼女なしの独身だもんね。そこを言うと私はあなたに言われっぱなしでもクビにしない優しくて、まだ未来有る19才だものね。」


 言われっぱなしはなかなか腹が立つので、負けじと嫌みでお返しすると、ロンは「そう思いこみたいならそう思いこんでいる方がお嬢様にとっては幸せですよ。」と含み笑いで返してくる。


 何その言い方。

 そんなこと言うとロンの色恋沙汰も気になるじゃないと食いつけばニッコリわらって何も発言してこない。

 あくまでもどこまでも食えない執事だ。



 この男…いつかギャフンと言わせてみせると心の中でアイネスは小さく誓っていた。



 そんなアイネスとロンのやり取りはお父様の咳払いによって中断されてしまった。

 

「まあ、それで結婚の日取りだがアイネスが学校を卒業する2年後となった。それまでに今以上に花嫁として相応しくなれるようにしておくんだよ。ロン頼むよ。」

 そう告げて、もう下がるように指示を出すお父様にアイネスは食いついた。




 ―――――学校は6歳からどの家庭の子でも通うことが出来、最高学年の21才で卒業となる。

 もちろんその間にいくつか卒業するタイミングもあるが、アイネスはとりあえず21才迄はと進学し続けている。

 そんなアイネスが15才の頃ロンは執事としてやってきた。ロンは優秀だったので家庭教師としても仕えてくれていた。




「ま、まってください!私はそもそも軽いノリで婚約したよーとは幾分か昔に聞いた様な気がしますが、本当のことだったのか、いつ誰と婚約していたのかも知らないし、私の意思は全く汲んではいただけないのですか?私の拒否権は??私、その婚約自体破棄したいんですけど!」


 絶叫にもちかい私の言葉を聞いて、お父様とロンは鳩が豆鉄砲をお見舞されたような顔をして見合った。



「お嬢様はただのどんくさい能なしだと思って馬鹿にしてましたが、脳みそがない方の脳なしでしたか。その様な大事な内容までお忘れになるとはまったく嘆かわしい。それに、拒否権はお嬢様にはないですよ。」

 そこまで言わなきゃわからないほど脳なしかとつぶやくロン。



 おい!後者!発言内容容赦ないな!というか、私を能なしとして馬鹿にしてたのか!

 いや、いや、落ち着け私。今はそこをツッコミ場合ではない。



「全く!!聞いてません!!というか、なぜ私が拒否権ないのをロンが決めるのよ!」






 結局、散々わめいてみたものの最終的に私はお父様とロンに「忘れたなんて酷い子」とあしらわれ、挙げ句に忘れたままは失礼なので自分で思い出すようにと理不尽な言われようで何も詳細がわからないまま部屋を追い出されてしまった。



 もちろん結婚に関しては拒否権を行使することも出来ずに……



 私の人生がかかってるのに……

 

 こうなればあと2年の間に相手を探しあて、なんとか結婚を破談にしなければ。



 絶対こんな理不尽結婚ぶち壊してやる!

 というか、未だに何も言ってこない婚約者など1度グーパンチをお見舞せねば!

 私をなんだと思っているんだ!



 やや不穏な決意を固め、今後の作戦を練るためにアイネスは自室へと急いだのだった。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

ゆっくりまったり更新予定ですが、楽しんで頂けたら幸いです。


評価頂けたらなお喜びます。どうかお願いします。


6月24日アイネスの髪の毛と瞳の色の特徴を編集しました。

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