目覚め
「どこ、ここ。」
目が覚めてまず思ったのは、ゴシック調なのかロココ調なのかわからない派手に彩られた天蓋はなんだ、という事。おかしいな、会社の近くの病院だったら県立だからこんな病室あるわけないんだけどなー、などと思いあたりを見回すと、やはり部屋の中も見事な調度品に囲まれている。というかヴェルサイユ宮殿かここは。なぜ宮殿にトリップしているのかと思案しているとドアがコンコンッとノックされた。
「失礼します」
「はい。」
反射的に返事をしてしまったが、誰だ?
「おはようございます、サリー様。お着替えをさせていただきますね~。」
いうが早いか、目の前の美しい女史は素早くベッドメイクしつつ私を引き起こしテキパキと服を脱がせる。
「ッ!?」
今私の事をサリーって言ってなかったかなこの人?外国人っぽいから訛っているのか?というか私軽々と抱き上げられたけど、意識不明が長すぎてガリガリになっちゃったのかしら!?何で!誰!どういう事!?
「はい、今日も麗しいサリー様でありますこと。フフッ」
私が混乱に囚われている最中、この美しい女史はすでに仕事を終えたらしく、破壊級の笑みを湛えている。
ふ、ふつくしい、ってそんな場合じゃなかった。とりあえず情報を得なければ!
「あ、あの私はなんでここに?というか手足が子供のようですけど...」
「なぜ、と申されましても?(サリー様もそうした哲学的な事に思いを寄せられるお年頃かしら)...ええと、旦那様と奥様がお互いを愛されているからですわ!それにとてもかわいらしい手足じゃありませんか、サリー様は!」
「...(なにも情報がないわね、いや旦那様と奥様、うーむわからん)。」
私が押し黙ったのを見て女史は少し困ってしまったようだ。
美人の困り顔を見るのはとても心苦しい。さりとて解決策もなくうぅむと唸っていると、二人にとっての天啓が舞い降りた。
「おはよう、サリー!今日もかわいいなぁ、サリーは。エリザベス、今日のテーマはなんだ?」
「はい、旦那様。木陰でピクニックをする乙女、でございます!」
これまたイケメンの外人が現れたと思ったら、エリザベスさんこと美人女史(エリザベスさんなのねこの人)ときゃあきゃあ騒いでいる。
「サリー様はまだまだかわいくなりますよぉ?御髪を整えていませんから~。」
「おい、それは本当か!?今でも女神のようだぞ?」
「うふふ、サリー60%です」
うーん、B級妖怪かな?と失笑が出そうなのを堪えていると、やはり仕事の早いエリザベスさんに鏡台の前に連れて行かれる。
「うそ...。」
そこには美人に髪を梳かれる天使がいた。