Need a limit fou oneilos
彼女が狙われる理由は、彼女の魔力に由来する。彼女は滅多に固有魔術を使う事は無いが、それでも彼女が保有するそれは彼ら夢害にとって凶悪だ。ならば潰すしかないだろう。ドラハ家が襲われた理由もそれだと思うのだが、となるとだ。何故、彼女は今更になって狙われるようになったのか。恐らくは成長による魔力の増幅と、禁忌によるキャパ上昇だろうか。なんだっていい。彼には彼女を守るという義務が出来た。なら、守るだけだ。ティルアとも約束をした。彼が彼女を守る。たったそれだけの事だ。
ルティアは三歳になり、自分で歩けるようになったあくる日、彼らは外で散歩をしていた。ルティアのペースに合わせている為、かなりゆっくりだが、それが心地よく感じている。そんな時だ。奴が出た。まるでゴーレムのそれは、動きこそゆっくりだが、その巨大な腕から振るわれる一撃は重い物だろう。夢害を殺す。それは人を殺す事と同意だ。嫌になりそうだ。一体倒す事に彼の中で罪悪感が渦巻くのだ。元は人間。馬鹿みたいな話だが事実だ。ふざけていると訴えたいが、その相手も存在していない。
剣を形成すると、シャルムにルティアと共に逃げる様に指示する。ゴーレムはその腕を振り上げる。それと同時に彼は剣を地面に突き刺す。そして想像をする。この剣は壊れる事が無い。ゴーレムの腕を突き破り、粉々にする、と。思惑通りゴーレムは剣の柄に手をぶつけ、ドンッ!と音を出し、その右腕を粉砕する。けど、そんな物は決定打にならない。彼をすぐに爆炎を想像し、夢害を燃やす。耐久はある。だから、そこに水を掛けた。ありったけに冷えた水だ。物体は熱しられた後、急激に冷やすと脆くなる。それを応用すればいい。彼は自信が想像出来る最高の一品である、シャルムに捧げた剣を想像する。それは、きっと夢害を殺してくれる。ッガ!と嫌な音を立て、剣は、左腕を貫通し、そして破壊する。こうなれば後は楽だ。爆発を想像し、ゴーレムを吹き飛ばす。
「はじけろ」
そういうと、彼は想像を重ね、あくまでも自然現象を装った爆発を起こした。これでゴーレムは倒した。
「……………これは……まさか本体じゃないのか?」
夢害にしては動きが鈍すぎる。それにゴーレムからは凡そ知能という物を見る事が出来なかった。つまりだ。これは夢害の一部であって、本体は別にある。いうなればコアなるものだ。珍しいケースだが、油断した。シャルム達は今家へと逃げているだろう。それがもしかしたら災いをひこ起こすかもしれない。そう気づいた少年は、魔力による、身体強化の効果を使い、地面を蹴り、彼女たちを追いかけた。
「クゥ……」
と呻き声をあげた。まさかもう一体夢害が居るとは思っていなかった。
(ボクの固有魔術じゃ歯が立たない。でもルティアを転移させる事は出来るはずっ!)
一か八かの選択になるだろう。彼女の転移術は八十パーセントの確率でしか成功しない。でもこのままじゃ二人共襲われて終わってしまう。それは、それだけは絶対に避けなければならない。ルティアだけは必ず守る。
「Oneil de us born『その導きへと狂え』」
その術式を起動したと同時に彼女の腕からルティアは消えた。成功した。それを喜んでいる暇はない。彼女には奴と戦えるような戦闘力は無い。彼の術を真似する事はきっと叶わないのだ。けど、何もせずに死ぬよりよほどいいだろう。
「Need a limit fou oneilos『渇望せよ。世界の限界を』」
その言葉を口に出した瞬間、体が軋む様に痛んだ。
「グゥアアァアアァアアァッァアアアッ‼」
痛みに耐えきれず叫んだ。脳が術の処理に追い付けていない。全神経を使え、想像しろ。自分を守る事が出来る力。夢害になんて負ける事は無い圧倒的で絶対的な力。
「Anfang『起動……せよ』」
魔力が体表に現れる様に、彼女が光を帯びた。けどそれと同時に剣の形成を叶えた。相手はゴーレムではなく球体だ。ならそれを切ればいい。
「アァアアァァァアァァァアッァアァアァアアッ‼」
剣を握り、振り上げた。こんな所で死んでたまるか、とただその一心で。ガッッッ‼と金属のぶつかり合う音が聞こえた。ただ、それでもその球体を壊す事は叶わない。それは球体から形状を変化させる。そして彼女を覆うように広がった。どう見てもそれは、表面からは想像も出来ない体積で、彼女を包んだ。取り込んだという表現の方が合っているのかもしれない。何故ならそれは彼女を包み込んだ瞬間再び元の小さい球体へと形状を変化させたからである。
誠に残念で仕方がないのだが、彼は間に合わなかった。気付いたのは彼女を追いかけ、家と戻った時、ルティアの姿はあってもイルアの姿は見当たらなかった。
「おかさんぼくをにがした」
という彼女の言葉は彼を絶望へと至らせるには十分である。彼女が使うであろう逃走経路を追ったが見つからず、それでも未だ持つその希望を見捨てる事なく、家のドアを開けた。シャルムはルティアに対し、転移魔術を使い、逃がした。だが、転移という物は、二人以上を転移させるには圧倒的なキャパシティが必要になる。果たして彼女にそこまでの魔力の蓄えがあったのかどうか。それはきっと否だ。
「ルティア、今からおじいちゃんの所に行こう。お母さんは俺が連れ戻す。だから、暫くおじいちゃんの所で待っていてくれ。出来るな?」
「…………うん」
彼女は短い返事を返した。きっとしっかりとは意味を理解してないのだろう。シャルムは死んだわけじゃない。彼にはなんとなく解っている。いや、信じているのだ。だってそうじゃないと生きていけない。彼にとってシャルムの存在は何よりもかけがえのない物なのだから。
「じゃあ行こう」
彼女の手を取り、彼は再び外へ出た。




