第1話 神代桔梗の第2の人生が始まります
俺の名前は神代桔梗。不運な交通事故で死亡して、19年間の幽霊生活の末、転生を天使に告げられた。生前と死後を合わせると37歳と中年だが、18歳で死んでから肉体(幽体?)、精神共に全く変化はない。れっきとした高校生だ。
「ここは天界の首都ノルヴェルの中心にある天界大図書館です。転生神クルラ様の準備が出来次第お呼びしますので、こちらでお待ち下さい」
そう言って天使は飛び立っていった。白い羽が落ちたが、地面につくと同時に消滅する。不思議な場所だ。
5メートルはありそうな巨大な両開きの扉を開き、俺は中へと入っていった。
少し見渡すと掲示板のようなところにこの場所についての説明が貼られていた。
『ここは天界大図書館です!
みなさんが下界のことを詳しく知って、公平に仕事をするために作られた場所で、天界、下界、魔界のあらゆることが本の形で保管されています!』
「──凄いな天界」
俺はそのポスターを見て、そう言うしかなかった。世界の全てを知ることが出来るのなら、今この瞬間にも本は増え続けているってことになってしまう。
少し歩いて日本の図書館だったら新刊が置いてありそうなところに来た。そこにはこの図書館の使い方について書いてある本が10冊ほどあった。俺はその中から『本の検索について』という本を手に取った。
『世界のあらゆる事柄を知ることが出来るこの天界大図書館には約971不可説の本が置いてあります。この中から知りたい情報を見つけ出すなんて、そういう御技を使える方しか出来ません。という事で、ここには検索のシステムがあります。方法は706ページをどうぞ』
『検索の方法は極めて簡単。検索開始と唱えてからキーワードを述べるだけです!これはかの魔法神が──』
俺は魔法神が出てきたところで本を閉じた。こういうのは難しい記事が始まる前兆だ。読むのを止めるのが賢い。
「さて、検索開始。キーワードは異世界」
本棚から離れ、知ったばかりの検索方法を試す。すると本棚がうごきだし、異世界というキーワードに一致する本を俺の前まで持ってくる。
しかし俺のもとにたどり着いた本はほとんどが異世界もののライトノベルだった。絞りきれなかったかと思ってさらにキーワードを追加した。
「検索開始。キーワードは異世界、実在」
すると本が何冊かに絞られた。俺はその中のひとつ、『メルギ』を開いた。
メルギとは数多い『世界』のひとつ。いわゆるファンタジーな世界で、住民はレベルを持つ。しかしレベルよりもステータスが重視され、自らのレベルを知らないものも多い。
俺は異世界転生するならここがいいなと思ったりした。仮にも高校生、ファンタジーに憧れるお年頃なのだ。
「クルラ様の準備が整いました。転生の塔へと転移します」
俺がメルギの説明を読み耽っていると、俺をここまで案内した天使が後ろにいた。まだ読んでいたいなと思いながらも渋々天使に返事をした。
(まあ、普通に転生するなら全部忘れちゃうんだし、いいか)
俺は光に包まれ、転生の塔とかいうところに転移した。