酔っ払いな恋愛戦闘姫続き
連絡交換も無事に終わり、二人でとりとめもない話をしたあと、鈴木さんは、明日早いのでとママにお会計をお願いした。
お会計が済み、席を立った鈴木さんは、あたしを見て言った。
「高橋さんは、まだ飲んでいかれるんですか?」
「はい。もうちょっとだけ飲んでいきます」
ここで、一緒になんて野暮なことはしない。
急いては仕損じる。
それに、あたしにはやることがある。
あのオッサンと、とことん話すという。
「そうですか。あまり飲み過ぎないでくださいね。
今夜はお話できて、本当に良かったです。また、一緒に飲んでください」
「はい。わたしで良ければ、ぜひ」
引き際のスマートな男は好きだ。
そんな鈴木さんに益々惹かれる。
「マスター、ごちそうさまでした。また、お邪魔させてください」
「鈴木さん、ありがとうございます。私もお待ちしてます」
おい、『私もお待ちしてます』に、やけに熱がこもってないですかね。
だいたい、そのセリフいらなくない?
入口まで出るママに、丁寧に送られて、鈴木さんはお店を後にした。
戻ってきたママに、
「マスター、なんかください」
と棘のある声であたしは言う。
「お客様、だいぶお飲みになってるようですが、大丈夫ですか?」
「ええ、ぜんぜん大丈夫ですから」
ママの顔がちょっとひきつっている。
あたしを帰そうたって、そうはいかない。
「かしこまりました」
ママは渋々答えた。
日付が変わる頃、お客さんも引けて、店にはあたしとママの二人だけに。
ダンッ! あたしはグラスを強めにカウンターに置き、ママを睨み付けた。
「話があるから、ちょっとこっちに来なさいよ」
「あら、やだ。何をそんなに怒ってるのよ」
すっとぼけは許しません。
「あたしの言いたい事は、分かるわよね? この色ボケマスター!」
「ちょっと、色ボケって失礼ね! この小娘が! それに、マスターはやめてって言ってるでしょ!」
「何が、たまには解放されたいだ。解放されっぱなしじゃないのよ! 出来ない使い分けなんて、やめてしまえ!」
「あら、やだ。わたしに取られそうで怖いのかしら? 小娘ちゃん」
「ふざけんなあ! オッサンに言われたくないわあ!」
「誰がオッサンよ! 失礼しちゃうわね! わたしは熟女よ!」
「そんながたいのいい熟女いるかあ!」
そんな言い合いが暫く続いたあと、あたしたちは疲れて、お互いにため息をついた。