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《鬼神族》  作者: 鬱っぽいダラダラ星人
長女 梅木樹珠
19/25

第19話:星の場所

読み(主に名前類):


梅木樹珠:うめきじゅじゅ

歴歌留多:れきがるた

主様:ぬしさま

巫廻麗刄:ふみつば



なんかね、20話書いてたらね、19話投稿し忘れてて悪い方向で興奮した←大丈夫?精神科医行く?

 妹がいるなんて、聞いていなかった。


いたのだったらなぜ兄様は手紙上何も言わなかったのだろう、これもまた兄様の心情の不安定を表しているのだろうか。


「兄様はなぜ手紙で妹がいると言わなかったのでしょうか?」歴兄に尋ねる。


「あの手紙は半分俺が書いた、上半分の方をな。だけれど巫廻兄が急に起き上がって筆を掴んだと思えば、下半分の手紙をつらつら筆を震えさせながら書いていたとさ。」


「上半分の手紙も兄様の筆質でしたが」


「歴史の鬼に何を求める、真似ることなんざ赤ん坊にでもできるさ。」下駄を脱ぐ歴兄は真剣な表情をして家の中へ入った。


「兄様はいつから不安定に?」


「…梅木樹珠、なぜ月水兎が歴歌留多の檻の中で監視されているのかわかるか?」父上が口を開いた。


「人間と鬼の間に子を作ってしまったからでしょうか。」


「確かにな、だけれど実際その法を除外する方法というものがある。」父上はひどく疲れた顔をしていた。疲れたというよりも、悲しんでいる表情の近い。


私が「それは?」と聞く寸前、主様が口を開いた、鈴蘭の声が戸の方で響いた。


「人の魂を食って鬼人にすることによって、人と鬼の関係は法には触れることはなく可能となる。相手の人を鬼人にすることによって、その人間は子を腹の中に宿している間死ぬ可能性というものもなくなる。」


そのほか鬼の能力に目覚める元人間も、超人の身体能力を得る鬼人や、早い身体回復、体の組み立てを変えること:幸運を持った鬼人は時には鬼神よりも強くなる時だとてある。と付け加えた。

「鬼人と兄様にどんな関係が?」

「さぁ、それはわからん。」父が答えた。


「歴兄は?」

「俺の方で助けられた時はまだ正常だったさ。」ため息を吐く歴兄。


「主様、あなたは何か知っているのですか?」

「知ってるけど、君の兄様は僕に話されると機嫌が悪くなるだろうから、建前何も知らないことにしておいて?」にっこりと主様は微笑んだ。


「なぜですか?なぜ教えてくれないのです?私の知らない妹が絡んでいるのですか?」

「関係というよりも、存在してすぐ消えたことで巫廻の感情に影響はしたけれど、根っからの問題は鬼人のことなのだろうね。」

「建前の中の本音は何なのですか。」

「僕は何度も『なんで』と聞かれるのが嫌いなんだ、この場でそれを一番理解しているのは君だと思っていたのだけれど。君の舌を抜いてやろうか?ん?」


顔の筋肉と皮は笑顔を被っているが、目には怒りが見えた、まだ私が幼い小鬼の頃見た苛立ちの眼差しだった。


「はい」


そういった後、びっくりするほどにすぐ主様の怒りの地獄火の目は安らかな目に戻った。


  「もう一度言うけれど、僕が彼の過ちを口に出すことはこれからはない。人間を鬼に変わらせることで一緒に愛だの恋愛だの家族になるだの子作りだのできるから別に構わない。鬼の法にもふれることはない、むしろ新しい鬼を作り出すことになるから大歓迎なのかもしれない。だけれど覚えておけ、人間という判断をする生き物を鬼という委ねの生き物に変えることは異界が許しても天界は絶対に許さないからな。」


「天界は絶対に、人間と鬼の一線を許さない。だから僕はずっと人界と異界の間で道歩く。結局僕は神獣様に拾われたヒトの孤児、嫌われているんだよ。」と、主様は二重の声に慣れず、咳をした。




久しぶりに入る家中は、小さく見えた。家を出て人界へ行った時は小鬼だったから家を大きく感じたのだろう。家に帰ってきたんだという安心感だけが心を包む。長い一瞬の中で、私はいろんなものを見てきた。嫌なものばかり見ている時だけ時間が長く感じると何処かで聞いたが、人界での生活は鬼にとってそんなに苦しいものだったのだろうか。


異界の食べ物は鬼の腹の足しになる。

人界では異界の食べ物がないから、人間を食べる羽目になる。


人間は結構まずい。

食感は別に美味なのだ、まずいのは食べている時なんども見なければならない「死んだ顔」だ。


あれは悪夢を墓から蘇させる。


大きいというよりも広いと言った方が正しい我が家は、二手に分かれて構成されている。家臣が日々義務をこなし義務を作る本丸と、家臣が一人もいない本家。本家に行き着くためには守りが強く固められている本丸を通らなければならない、そのためどこからも視線を感じる羽目になる。

「まて、あれは梅木樹珠様ではないか?」

「さっき戻られたばかりだそうだが…確か人界の方で暮らしになられた。」

「人界の方でか?何か戻る理由とかがあり、帰ってきたのだろうか。」

「巫廻麗刄様と歴歌留多様の問題もあったろう、人界は最近危険だ。」

「でも場所という違いも時代の違いもあるだろう。それはありえなくないか?」

「確か、新しい妹様も人界で亡くなられた。」

 

 「人間め、鬼神族の一族がお前らに何をしたというのだ。」



目を閉じる、耳も閉じたい、見たくも聞きたくもない。兄様の部屋の襖が見えた、雰囲気は最悪、殺気でもない悲しみでもない狂気でもなく怒りも感じない。一言で表すのならば、






それしか感じられない。



兄様、梅木樹珠です。只今戻りました。

「…」



文をいただいて、読まさせていただきました。この度戻ってきたのは自分の身の危険を感じたからではなく、兄様の不安定を感じ心配で戻ってきたからです。

「大丈夫だって、文にはかいてあったろう」


知っています。

「じゃぁなんで戻ってきた?」

心配だからです。



「妹のことは聞いた?」

聞きました、消えたと。



「あの子は生きてるよ。」

星が流れたと歴兄から聞きましたが。


「生きてる。赤音も生きてる、死んでなんかいない。」

赤音とは?




  「やめてくれ」




 静寂、その後なんども兄様に話しかけたが、返事はなかった。主様も兄様の部屋の襖の前では何も言わず、茶の間へ行く廊下の方では一言「大丈夫と言っているのだから、大丈夫なのだろう」と言っていた。


赤音とは誰だろう、鬼人のことなのだろうか。



「自分もあまり巫廻麗刄の精神状態をしっかり見ていなかったから、まさかあそこまで不安定だったなんて知らなかった。」父上は下を見ながら座っていた。


「あの子は自分の感情を自分で制御できる子だ、今まで僕があの子とともにくくってきた修羅場のあの子の反応を見た僕だからこそ言える。なんとかなるというなら、なんとかなるのだろう。大丈夫じゃないなら、大丈夫とは言わない。」茶を煎れる主様は手のひらを合わせ、白と黒の混じった彼の前髪がつぶった目を微かに隠した。


 「おかえりなさいませ、樹珠様。身長もまた大きくなられて。」襖の外から、声がした。


昔一回だけ聞いたことがある声だ、艶のある嗄れ声。


「月水兎殿?」咄嗟に声が名前を出した。


私は歴兄を見つめて、歴兄はやれやれと笑い、立ち上がって襖を開けた。そこには、私が知る月水兎とは違う前髪が頭の天辺のツノで分けられた白髪の中年の男の鬼だった。

角は月水兎と同じ3本で、毛並みの青っぽい白は男の髪の毛と一致している、目つきの悪さとは裏腹に声の優しさを感じるのも同じだ。この男の鬼はやはり月水兎なのだろうか。


「名前まで覚えられているとは、一回しかお会いしていないのに素晴らしい記憶力。ますます母君に似てまいりましたね。」男は、自分を月水兎だと認めた。


「お久しぶりです。」私はびっくりしたばかりか頭を下げ、月水兎も私の行動にびっくりしていた。


「罪を犯した鬼の前に頭を下げてはダメですよ、樹珠様。」優しく呆れた笑顔を表情に浮かべた。

「そうなんですか?」


「そうですよ。」


その後歴兄は月水兎を茶の間の中へと誘い、主様、父上、歴兄、月水兎と私で茶を啜った。

会話はなんとなく軽かった。多分、先ほどの重い空気を月水兎は一生懸命軽くしようとしていたからなのだろう。主様は何故か幸運の持ち主らしい、五人の間で唯一茶柱が立った人だったからだ。


私は軽い会話よりも、自分が不思議に思う答えを求めた。それでも、茶の間からは一切真剣な話は流れなかった。

白狐が夜空の中で宴会を開き流れ踊る時に私は本家の建物の外でそれを見つめていた。静かに口ずさむ、兄様が子守唄で使っていた音を。大丈夫じゃないのならば、大丈夫を使わない、主様の言葉は私の言葉と似ている。


私はあなた、あなたは私。


これ以上の矛盾はないに等しい。



あの時はこの言葉に考え溺れ、

この時はその言葉に振り回される。


『物語とは、道のようで、時間をかけて、情報を得て、余計な雑音をかけて、賭けに誘惑され、苦しみもがき、新たな発見を繰り返し見つけて、なんども繰り返すものだ。    』



世界が生まれた時、空は真っ白だった。それを信じるか?

その賭けに乗るか否かは人間次第。


人間次第、鬼は死んだ。死んでゆく、星は鬼の命の証明とも言える、流れてゆく、天に昇り手を伸ばしていく。


「空の何を見てるんだい?」主様は私に尋ねた。


何を探しているのだろう、


自分の命の証明?


歴兄の命の証明?


父上の命の証明?


兄様の命の証明?


月水兎の命の証明?


いや、違う。




「母上と椿の星がいた場所を。」


主様はそう聞いたら笑った


「意味なんかあるのかね」


「ありますね、興味がわく。」


「そうか、じゃぁ僕も探そう。」


「誰の星でしょうか?」



「僕の星の場所かな?」




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