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《鬼神族》  作者: 鬱っぽいダラダラ星人
長女 梅木樹珠
12/25

第12話:朝秋村での文

読み(主に名前類):


梅木樹珠:うめきじゅじゅ

月鬼村:げっきむら

朝秋村:あさあきむら

月水兎:げすうと


不明点の解説


⚪︎⚪︎の鬼:名誉のある鬼が持つ鬼名(名前)、小説内では「戦の鬼」と出るがそれは戦を好み行う月水兎の鬼名である。ちなみに鬼名を与えるのは鬼神族の長、梅木樹珠の父であるが鬼の生み親として「命の鬼神」樹珠の母が名前をつける。半鬼もまた相当の名誉を与えられた場合、鬼名を与えられる。だが「⚪︎⚪︎の鬼神」ではなく「⚪︎⚪︎の鬼人」として記される。


最近興奮状態が少なすぎてちょっと不安なんです←いや、それが普通だから

道取りは長かった。


お梅はなぜか裸足だった、だから自分の下駄を履いた。


もう一つ、お梅の足は私の足より小さかった。その分下駄がお梅の足に合わなく、その分足の痛みがひどかった。下駄を脱ぎ捨て、道を裸足で歩く。道の上に転がっている小石が足に刺さり下駄で出来た傷も少々痛かった。まだ私が小さな小鬼だった頃を思い出す。確か主様に出会った直後に私は人界へと降りた。



 「懐かしいな」夕焼けの中一人でつぶやいた。


自分の声がお梅と重なった。夕焼けの中、朝秋村が美しく広がった。



確かに、旅人が口を揃えて「朝秋村が美しい」というわけだ。夕焼けがここまで村一つ美しく空に染まっていると見ると、逆に清々した。そこに座り込んだ私は、じっと太陽が落ちてゆくのを見ていった。




人界に降りた時は日が昇る時だった。本当は直視できないはずなのに、馬鹿みたいに登ってゆく太陽を見守っていた「こんなところで、死んではいけないのだ。」とあの時言った言葉をもう一度口にした。

あの日は記念日のような感覚だった、いや記念日だったのだ。記憶を、自分の脳に刻まれている歴史を思い返す。今日はあの日の記念日だった。日が落ちた時思い出した。


星が夜の原っぱを駆け抜ける白狐のように流れた。朝秋村の小さな家たちは灯りを点し始め、どこを見ても星空のようだった。天も、地も、綺麗な星空。


道を踏みしめるたび味わう小さな怖さを感じた。「夜空から落ちてゆくのではではないか」という怖さ。空を歩くような幻を想像した。ある意味、幻想的だ。



 「うわっ!!」足を踏みはずし、転んだ。


幸いなんの怪我もしなかったが、ちょうど村の眼の前まで来た。それも、村人の目の前で転んだ。

 『あぁ、』と一人で固まった。

村の人たちは「なんだなんだ」とびっくりし、転んだ私を見た。一人は尻餅をつき、もう一人は叫んだ。

 「血だ、血だ!!」女子には悲鳴を上げられた。

やばい、言い訳をしなければと歯を食いしばり、演技をした。


「助けてください、山賊に襲われたんです!!」お腹を抱え、一芝居を見せた。あ幸い、私には荷物というものがなかった。それゆえ、血痕もこのお梅の体からあふれたものだった。


足をくじいたのも事実であったし、小石が刺さった足に「ゆっくり歩いた」という印象よりも「走って逃げた」という印象が強かった。上手くごまかせると願った。

願い通り、村の人々は私をかくまった。


小鬼の時から演っていた「言い訳」という経験が効き始めているのであろう。もう嘘をつくのにも抵抗がない。自然に、楽に演じる嘘を私は小さい頃から楽しんでいた。


とある女の百姓が私を彼女の家に招き入れた、そこに彼女の夫と子供二人が私を暖かく迎い入れてくれた。

 「山賊に襲われたんだって?聞いたよ。確かによくこの村の綺麗な夕焼けを見るために旅人が訪れるんだ。そこで荷物を狙ってくる山賊がいるんだよ。たしか『戦の鬼』を祀っていたんだと思うな。とにかくよかった、軽症で。」

「とうちゃん、たしか戦の鬼ってあの村を呪った鬼でしょ?この村に何の用があるんだよ。」

「その話をしてはいけません。」と会話を挟んだのは女百姓、静恵だった。


「えぇえ」と子供と父親が嘆く、仲良しのようだ。


「すみませんね、こんな騒がしい家族で。えぇっと、お梅さんでしたっけ…?」

「えぇ、呼び捨てでも構いません。今日は本当にありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ。子供達も珍しいお客様に喜んでいて、しかもこんなに美人の方!どうぞゆっくりしていってくださいね、今夜はちょっと冷えますから。」静恵は衣を渡した。


子供達が眠そうにしている目をこすり、静恵とその夫が立ち上がった。

「じゃ、私たちはもう別の部屋にて寝ているのでなにかが必要でしたら遠慮なく教えてください。では、おやすみなさい。」子供一人づつ抱えた静恵とその夫はそっと部屋を出た。


私も「おやすみなさい」と一言つき、紙を取り出した。


呪われた村、戦の鬼、戦の鬼を祀っている山賊。


多分呪われた村は、戦の鬼『月水兎』を祀っている月鬼村だ。だが、山賊などいたことは初耳であった。

歴兄への文で問おう、そう判断した。




「拝啓、歴兄様へ。


 この度、人界へ降り立ち初めての手紙でございます。

そして、できるだけこの手紙は『戦の鬼』月水兎殿へには見せないでいただきたいのですが、もしこの手紙に記されていることを彼がもう知っていている場合この文をどうか彼に見せてくださいませ。

人界で私は13年間月水兎殿が守り鬼として祀られていた月鬼村へ住み着いていました。

ここでは奇跡的に月水兎殿のご家族、もちろん半鬼の娘様にかくまわれ、命拾いしていました。

ですが、13年目月水兎殿の娘様が村長を殺しそして私までも殺そうと行動してきました。危機一髪力を持った人間に助けられ、ただいま梅木樹珠はその娘様のお身体を借り夕焼け美しき朝秋村という村へ逃げつきました。

歴史の鬼の兄様ならばもうご存知だとは思いますが、私には何故娘様が村長を殺し私を殺そうとする不思議な行動を起こそうと思ったのかが不明なのです。なので、もしこの文を読み返事をくださいますのであればどうかこの不明点を教えてくださいませ。


ここで本題なのですが、13年前私は月鬼村を「鬼を祀っている村だが、他からは鬼から呪われている村として捉えられる」と認識していましたが朝秋村からの情報ではそこから山賊の団が作られていると聞きました。その団もまた戦の鬼を祀っていることで本当のことなのだと思われます。

ですが、実際13年もそこにいた私はそんなことを聞いたこともありません。この山賊云々のことは月水兎殿は知っているのでしょうか?


人界での生活は毎日危険が迫ってもおかしくないと思いますが、案外楽しい日々も待ち構えていました。

主様と兄様、そして月水兎殿へにもよろしく伝えてくださいませ。



梅木樹珠より」




筆を下ろし、紙をたたみ、筒に入れた。

誰にも感づかれないように小さく隙間を開け、手紙を入れた。

明かりを消した後の夜の静けさと星の光はまだ幻想的で、人界へ降りる準備をしていた時の異界での夜空を思い出させる。主様は、あの神主は、憎しみの視線を私に浴びさせた小さな視線はこの景色を日常的に見て居たのであろうか。


小さくため息をついた後、気を失うように眠りについた。




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